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”良い技術”と”悪い技術”? テクノロジーの進歩と法整備の課題「ドローンの衝撃」

読者のみなさまは、「ドローン」と聞いて何をイメージするでしょうか。

日本では、なにかとお騒がせな事件でその名前がとりざたされるため、あまり良いイメージがないかもしれません。

いつの世でもそうなのですが、新しいものが出てくると、それには必ず良い使い方と、悪い使い方が発明されるものです。

今回取り上げる本にも、そのあたりのことが記されています。

ドローンの衝撃

ドローンの衝撃
著者: 河 鐘基
刊行: 扶桑社
(引用元: http://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594072971)

奥付を見ると、刊行日が2015年7月1日となっています。

ドローンのように、目覚ましい発展をとげている世界について触れている書籍としては、やや古いかもしれません。

たとえば、Googleがドローン事業「プロジェクト・ウィング」を打ち切っていると記さていますが、その後に再開されているようです。

ですので、これから記すことはこの本の記述に基づいているため、やや古い部分もあるかもしれませんが、そのあたりはご容赦ください。

筆者がこの本を読んでもっとも意外に思ったのは、ドローン産業とドローン活用において世界をリードしているのが中国とカナダであるということです。

中国は、ドローンを製造、販売することで世界をリードし、カナダはドローンを活用するうえでの法整備で世界をリードしている旨が記されています。

中国がドローンの製造、販売で世界をリードしているのは、いわば「世界の工場」であるためです。

スマートフォンを製造するための技術や部品の多くは、ドローンにも転用できるため、これらを活用してドローンが製造、販売されているそうです。

世界をリードする中国とカナダ

一方、法整備については、カナダが早い時期から始めたこともあり、カナダの産業界はその活用例を着実に増やすことができているようです。

ここまで読んで「アメリカは?」と思われるかもしれません。

少なくとも、筆者はそう思いました。

製造において中国がリードすることは置いておくと、法整備はなにかとアメリカのほうがスピード感があるイメージがあるのですが、そうでもないようです。

アメリカでは、連邦航空局(FAA)の認可を得ないとドローンを使ったサービスの試験ができません。

この認可を取得するための基準がたいへん厳しいそうで、活用例をなかなか作れないというのがアメリカの実情だそうです。

それでは、われらが日本はどうなのでしょうか。

製造・販売についていえば、ドローンの中にはけっこうな量の日本製パーツが使われているので、すくなくとも製造技術だけでいえば世界でもかなり良い線を行っていると言えそうです。

この原稿を書いているときにも、このような記事を見つけました。

[世界最大手の中国ドローンメーカーは、日本の部品を5割使っていた!]
http://newswitch.jp/p/6570

もう少し、日本のドローンのポテンシャルについて書籍で触れられていることを見ていくと、次のようなことが挙げられます。

・小型無人飛行監視ロボットの試作機を世界に先駆けてはじめて公開したのは、警備保障会社のセコム
・農薬散布用小型無人飛行機としてFAAの認可をはじめて受けたのは、ヤマハ発動機が開発したRMAXという機体


さきほど、中国のドローンメーカーが日本の部品を5割使っていることを記しましたが、単に部品だけではなくドローンそのものを作り、活用するという点でも日本の企業は活躍しています。

法整備については、日本はまだまだこれからの様子ですが、これについては良い捉え方もできます。

世界各国でさまざまな事例が出揃いつつあるいま、それらを参考にして日本なりの法整備を進めることが可能です。

「ルールを無視した使い方」が生み出す新たな発想

ここまで、書籍に書かれたドローンの活用について、いわば「良い使い方」をメインにして触れてきました。

しかし、この書籍には、「悪い使い方」についても触れられています。

たとえば、中米から北米への麻薬の密輸にドローンが使われている事例が記されています。

決して褒められた使い方ではないのですが、輸送コスト、当局への発覚時のリスクなどを考えると、ドローンは組織員の命を危険にさらさない有効な手段のひとつなのだと記されています。

この話題については、書籍の第四章で触れられているのですが、「産業がどうだとか、堅苦しい話はちょっと」という方でも、こちらを読むと「そんな使い方もできるのか!」と妙に納得すること請け合いです。

ルールに縛られすぎると、それを守るべく自由な発想ができなくなってしまいがちですが、ルールを無視した使い方を考えるということには、何事にも縛られない発想ができるというメリットがあります。

あえてそういった「ルールを無視した使い方」を見つめることで、新たな発想が浮かんでくるということもあるのかもしれません。

ちなみに、あまり書いてしまうと読んだときの楽しさが減ってしまうので割愛しますが、筆者はこの本に記されたドローン以外の密輸方法に「すごい」と思ってしまいました。

それは技術的な観点からすれば決して目新しいものではないのですが、ドローンの製造技術よりも、むしろそちらが実現できてしまう製造技術のほうがはるかにすごいのではないか?とさえ思いました。

それがいったい何か知りたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。

平岩 明憲

平岩 明憲

フリーランスのIT技術者です。業務系システム開発をメインにしています。有限責任事業組合アプライトネスのメンバーです。とあることがきっかけで「IT技術者が、さまざまなことについて、いろいろな人と話し会える場が必要だと」と思い立ち、読書会を立案。2012年に「伏見なんでも読書会」をはじめました。

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