3Dプリンタキットの選び方 part1 ー よい3Dプリンタとは | ITフリーランスエンジニアの案件・求人はPE-BANK

フリーランスの案件・求人TOPITエンジニア独立ガイドコラム3Dプリンタキットの選び方 part1 ー よい3Dプリンタとは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-

3Dプリンタキットの選び方 part1 ー よい3Dプリンタとは

みなさんこんにちは。PE-BANKプロエンジニアの藤井光晃です。

前々回では、3Dプリンタキットを購入するときには考えることが多すぎて迷うので、思い切って最初の一つを考えすぎず購入してみることの大切さをお伝えしました。 そして、考えすぎないでも、うまく購入するために最低限考慮すべきことを解説しました。

今回からは、最低限考慮しないといけないことから一歩進んで、3Dプリンタキットの選び方について掘り下げて解説していきたいと思います。

3回にわたり私が考えるよい3Dプリンタキットの選び方について解説していきます。

Prusa i3のキットを買おう!・・・と思っても結構な種類がある

以前コラム「組み立てキットを購入するには?」で最初はPrusa i3系が良いとお伝えしたのですが、Prusa i3系でもかなりいろいろあります。 そのため、どれを選ぶべきかかなり迷うことになると思います。

フレームの材質がアクリルだったり金属だったり、ホットエンドの形状が汎用的なものだったり独自のものだったりします。 エクストルーダーについてもホットエンドの近くについているものだったり、本体側についていてチューブでフィラメントを送るものなど様々です。


2020アルミフレームとBowden Extruderを採用したPrusa i3

P03
アクリルフレームとDirect Extruderを採用したPrusa i3

ここまで多様であるのは、Prusa i3などのオープンソースで公開されている3Dプリンタは世界のいたるところで製造・開発・改良が行われているためです。

この多くの種類のPrusa i3の中から一つ選んで購入する場合、何を基準に決めていけばよいでしょうか? 良い3Dプリンタとは何か知り、それに近い3Dプリンタを探せばよい3Dプリンタを選べるはずです。

では、良い3Dプリンタキットとはなんでしょうか?

良い3Dプリンタキットとは?

私が思うよい3Dプリンタキットがもつ特徴として主なものは以下のものがあります。

  • •精度が高い(キレイに出力できる)
  • •最大出力速度が速い
  • •多種のフィラメントが使える(ABS系を使うためのヒートベッドがついている)
  • •LCDがついていてSDカードが使える
  • •汎用的で入手し易い部品が使われている
  • •メンテナンス・修理がしやすい
  • •改良がしやすい
  • •メーカーサポートがしっかりしている


本当に良い3Dプリンタを選ぶために考慮すべきことは結構多いです。
これらを一つずつ解説していきたいと思います。

・精度が高い(キレイに出力できる)

精度は綺麗に出力できるかどうかを表す性能で単純に数字で表すことが難しいです。 そのため剛性などから総合的に判断する必要があります。
また精度が高ければ印刷速度を上げても、出来上がりの品質も高くなります。
普通は速い速度で出力すると品質が下がってしまいますが、精度が高ければ速度を上げても品質的に合格レベルで出力できる場合が多くなり、作業効率がよくなります。
3Dプリンタの精度は品質と作業効率に影響するため最も重要です。

・最大出力速度が速い

最大出力速度が速いと、より短い時間で出力が完了するので作業効率が良いです。
しかし、速度が速くても出来上がり品質が良くなければ使い物になりません。 合格レベルの品質で出力できる最大の出力速度が速いことが重要です。
次回に詳しく述べますが、これはスペック表や商品説明などから読み取れることは少なく、実際つかってみないと分からないので、購入前の判断は難しいです。

・多種のフィラメントが使える(ABS系を使うためのヒートベッドがついている)

利用できるフィラメントの種類が多いことも重要です。 たくさんのフィラメントが利用できれば3Dプリンタ活用の幅が広がります。
特に注意すべきはヒートベッドがついているかどうかです。 3Dプリンタにはヒートベッドがないものも多くありますが、その場合はABSのように熱の変化で大きく収縮するような素材が使えません。 ABS系はPLAと違い扱いづらいですが強度と耐熱性があるので、また違った活用ができます。

アルミ製のヒートベッド MK3


また、最近少なくなってきましたが、組み立て済みの市販の3Dプリンタの場合には専用フィラメントしか使えないようにメーカーに制限をつけられているものがあるので注意が必要です。
フィラメントの制限をかけているのは市販の一部のモデルであり、3Dプリンタキットの場合は変にメーカーが制限をかけていることは基本的にありません。 Amazonなどで売っている汎用のフィラメントが自由に使えますし、ヒートベッドさえついていれば大抵ABS系も使えます。
また3Dプリンタには3mmと1.75mmのフィラメントがありますが一部を覗いて、ほとんどが1.75mmのものが使われます。

・LCDがついていてSDカードが使える

LCDは組み立てキットの場合は大抵ついていますが、組み立て済みの3Dプリンタでは省略されていることも多いです。

3Dプリンタでよく使われるLCDであるRepRapDiscount Smart Controller


LCDがついていればSDカードスロットもある場合が多く、SDカードに出力に必要なファイルを書きこんでおくことで、PCと接続することなく出力できます。 PCが無くても印刷できるので、PCの電源を切って出力することができますし、出力中にPCがフリーズして出力が最初からやり直さないといけないような失敗が起こりません。

・汎用的で入手し易い部品が使われている

汎用的な材料が使われていれば、故障したときに代わりの部品を調達しやすくなったり、ネットでの情報が多くノウハウを活かしやすいです。 また修理や改良もしやすくなります。

・メンテナンス・修理がしやすい

3Dプリンタは結構メンテナンスや修理が必要になることが多いです。 高級機であってもノズルなどは消耗品扱いなので、やはり定期的なメンテナンスが必要がです。
ノズルなどの部品の交換など、メンテナンスが簡単な構造になっていて交換部品も手に入れやすいならば、扱いやすく長く使えます。

汎用的でメンテナンスがしやすいホットエンド E3D

・改良がしやすい

3Dプリンタなどを使って部品を追加することで、性能や使い勝手を向上させることができます。
機種によってはZ軸の位置調整をしやすくするための機構を追加して精度を上げたり、ケーブルを整理したりといろいろな改良ができます。
3Dプリンタキットから自作する人は改良を行う人もかなり多いです。 Thingiverseなどのサイトをみると3Dプリンタを改良するための様々な3Dプリンタで作れる部品が公開されています。 これらは3Dプリンタを持っていれば自由に出力して利用することができます。
汎用的な部品をつかっていたり、取り付けられる場所があれば改良はしやすくなります。

改良用の部品がつけやすい2020アルミフレーム


・メーカーサポートがしっかりしている

メーカーのサポートがしっかりしていれば、問題が発生したときに質問して解決することができます。 またサポート期間中であれば、不良部品の交換や欠品の再送・一部返金など対応を行ってくれます。

しっかりしているところを選ぶと言っても、3Dプリンタキットの場合はサポート期間も短い場合が多いので、欠品・不良品を見つけた場合の返金対応くらいしか頼れないくらいに思っておくのが良いと思います。

しかし、良い3Dプリンタかどうかはスペック表からだけでは分からない

良い3Dプリンタの特徴について解説しましたが、これらの特徴を持った良いキットを見つけるにはどうしたらいいでしょうか?

家電やPCを選んで購入するときには、主に商品説明やスペック表を見ながら性能を比較して購入する場合が多いと思います。

しかし、その選ぶ際に参考にするスペック表が、3Dプリンタの場合はうまく性能を表していません。

例えば、スペック表に最大出力速度が書かれていますが、その速度で出力したときの品質については、そこからだけでは読み取れません。 つまり、スペック表の最大出力速度が速く、速く動作することができても、その速度で出力した場合の出来上がりの品質が悪く、全く使い物にならないものである場合もあるのです。
スペック表以外からも良い3Dプリンタかどうか判断していく必要があります。

まとめ

今回は3Dプリンタを購入する際に考慮すべき、良い3Dプリンタとはどういうものかについてお伝えしました。

これらを判断するためにはスペック表のみでは不十分です。

次回は「3Dプリンタキットの選び方 part2 – 当てにならないスペック表」と題して、スペック表の当てにならない部分とその理由を解説していきたいと思います。

藤井 光晃

藤井 光晃

PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。

TOP