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「IT×スポーツ」 ~データ解析が変えるスポーツの未来~

2016年10月25日、東京都港区のコミュニケーションスペース「Speee Lounge」にて、「IT×スポーツ ~データ解析が変えるスポーツの未来~」をテーマとする10月の「ANKET(アンケット)」イベントが開催されました。

今、スポーツ界では、選手やチームの強化はもとより、ファンを楽しませるための新たな要素として、データ収集とその分析が大きな注目を集めています。

今回は、様々なスポーツのデータ収集・分析を行うデータスタジアム株式会社より、フットボール事業部の加藤健太氏、藤宏明氏をお迎えし、主にJリーグのサッカーを例にした、スポーツにおけるデータ活用の現状と未来を教えていただきました。

第1部 データ分析からみるサッカー界の今とこれから ~ スポーツにおけるデータ活用の現状 〜

データスタジアム株式会社 フットボール事業部 アナリスト 兼 新規事業推進部
加藤 健太(かとう けんた)氏

第1部では、加藤氏より、Jリーグのサッカーを例にデータ収集と分析の現状を解説していただきました。
サッカーの場合、データの収集と分析は「プレーデータ」と呼ばれる映像をベースにしたデータが基本となります。データ収集(入力)の手法は、試合映像を見ながら、専属スタッフが選手のプレーを判断し、専用の入力ソフトでデータ入力するというもの。
ちなみに、1試合のプレー数は約2,000回で、1試合のプレーデータの入力にかかる時間は 10時間以上。1シーズンにデータ入力する試合数は約 1,000 試合にのぼるそうです。完璧なデータを作成するための膨大な作業量に、会場からは驚きの声が漏れていました。

今後は、プレーデータとトラッキングデータ両方のデータを掛け合わせることで、今まで数値化できなかった選手個人の能力やチームのスタイルなども可視化できるよう取り組んでいるそうです。

また、選手が装着した各種センサーから、心拍数、体温などをリアルタイムで計測するセンシングによる「バイタルデータ」についても触れ、将来的には、視線、視野、筋疲労などの計測も可能になるのではないかと語りました。さらには、「AIの活用」も視野に入れているそうです。

このように、ITとスポーツの未来について様々な可能性を提示しながらも、「ひとつひとつのプレーを見ていても、ゴール以外は何が正解だったのか分かりにくいのがサッカーという競技。データだけを見ていても有効な分析にならない」と加藤氏。データだけではなく、攻撃や守備のプロセスに選手のプレーがどのように関わり機能しているかをテータ化して分析することが、今後の課題のひとつだそうです。

「データはあくまでもサポートツールであり、スポーツの主役ではない」としながらも、今後のスポーツにおいては、データの収集、分析、活用がライバルに勝つための重要なファクターになるのは間違いなく、テクニックも戦術もより洗練されていく中で、データ活用などのより細かい部分のクオリティが勝敗を分けることになるだろうと加藤氏は予測されています。
それゆえに、「これまでサッカーの世界と関わりがなかった企業や個人にも、サッカーと関わる大きなチャンスが拓けるのでは」と、「IT×スポーツ」の将来性を語りました。

第2部 プロの現場におけるデータ 〜 IT活用の現状と課題について 〜

データスタジアム株式会社 フットボール事業部
藤 宏明(ふじ ひろあき) 氏

第二部では、同じくデータスタジアム株式会社のフットボール事業部に所属する藤氏より、現場におけるプレーデータやトラッキングデータの活用を教えていただきました。
現在は、各クラブに対する分析ツールのサポートやデータサポートと、新規のクラブへの営業を行っている藤氏ですが、かつてはJ1ヴィッセル神戸や名古屋グランパスにおける分析担当コーチという経歴の持ち主。よりユーザー(選手やチーム)視点で現場での運用を語ってくださいました。

まず、藤氏は、サッカーのプロチームがどのようなスタッフで構成されているかを説明。会社としての組織があり、選手、監督、コーチングスタッフらがいる。その中において、分析担当コーチがどのように自チームと対戦相手の分析を行い、パフォーマンスの向上を促しチームの勝利に貢献していくか、日々のフローを語ってくださいました。
試合前には対戦相手のチェックを行い、試合後は映像やデータを分析し監督やコーチと共有。さらに選手とのミーティングというサイクルを繰り返しているそうです。
分析担当コーチとしてのプレーデータの活用方法は、「一通りデータを先にチェックして、それを把握したうえで試合を観る」というやり方と「試合で気になったシーンがあったとき、あとからデータをチェックする」という2通りの方法が基本。さらに、クロスの蹴り足(右か左か)の回数、コーナーキックの成功数、状況別の勝敗 (先制点を奪ってからの勝率)などもデータ化し、現場で活用しているそうです。
しかし、データ化とその分析・活用が必ずしも勝利に結びつかないのも事実。「絶対がないのがサッカーです」という藤氏のコメントが印象的でした。

現場においても、様々な有効活用が期待できるプレーデータやトラッキングデータですが、「その導入と運用には、大きな壁がある」と藤氏。

ITを取り巻く環境や理解、PCのスキルなどはクラブによって異なります。今後の課題は、チーム側にデータの持つ価値をより深く認識してもらうことが重要であり「データ化は、チームの勝利に必要なもの、優秀な選手の獲得・育成に必要なものとして有用であると認知度を高めなくてはならない」と藤氏。
同時に、データを提供する側としては、プレーデータやトラッキングデータから得られる膨大な量のデータを、勝利に結びつくようにどのように活かしていくかが課題であり、より現場の視点、サッカーの視点に基づいたITサポートの必要性を感じているそうです。

「ITとスポーツ」という、これまでになかった新しい組み合わせにより、スポーツの世界は新たな可能性を切り拓こうとしています。同時に、ITに携わる企業や人々にとっては、新たな開発や研究の場が開けています。セミナー後には参加者からの具体的な質問も飛び交い、IT×スポーツの世界に対するみなさんの関心の深さがうかがえました。