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フリーランスが加入する健康保険は、必ずしも国民健康保険だけではありません。特に会社員からフリーに転向する時には、選択肢がいくつかあります。
今回は社会保険の種類を提示し、そのうちのどれに加入するのが得なのかということ、さらに保険料を安くするにはどうすればいいのかについても解説していきます。
「社会保険」という呼び方について
もしかすると「社会保険って言っても、会社勤めはしてないから国保なんだけど…」と思ったかもしれません。
社会保険には実は2つ意味があって、それは非常にややこしいものです。
フリーランスの人は、まずそれをはっきりと理解しておきましょう。
狭義の「社会保険」
狭い意味で社会保険という言葉を使う場合は、会社で入る保険のことを指します。国民健康保険に対する言葉として使われている「社会保険」です。「社保か国保どっちにするか」といったことですね。もしかすると、一般的にはこちらの方が、馴染みがあるかもしれません。たとえば福利厚生において「社保完備」と明記されている場合も、こちらの意味と考えられます。
ただし、このように、狭義の意味で使われている「社会保険」の正式名称は、実は「被用者保険」であり、実はこれを「社会保険」と呼ぶのは俗称のほかなりません。そのせいで混乱を招いていると言えるでしょう。
広義の「社会保険」
税金などで「社会保険」と言う場合は、もっと広い意味です。その場合の「社会保険」とは、「健康保険」、「雇用保険」、「年金保険」、「労災保険」の総称を指します。そして健康保険の中に「国民健康保険」や「被用者保険」があるわけです。(前述のように、この「被用者保険」のことが「社会保険」と呼ばれるから、ややこしいのですね。)
つまり、広義の「社会保険」には「国民健康保険」も含まれていることになります。すなわち、所得を計算する時の「社会保険控除」が、国民健康保険には適用されないというわけではありません。
そしてこの記事においても、広義の意味、特に健康保険という意味で、「社会保険」という言葉を使っています。つまり「フリーランスの場合、健康保険はどれを選べば良いか」ということになります。
フリーランスが加入できる保険の種類
フリーランスの人が加入できる健康保険は主に2種類。「国民健康保険」と「任意継続保険」です。
これらを順に見ていきましょう。
国民健康保険
フリーランスの健康保険と言えば国民健康保険。実はこちらは母体が1つではなく、市区町村による国民健康保険と、国民健康保険組合が運営するタイプの2つがあります。
普通に「国保」と言った場合は市区町村によるもので、最も一般的な国民健康保険と言えるでしょう。保険料には、医療分保険料(国保加入者の医療費のため)、支援金分保険料(後期高齢者医療制度のため)、そして40歳以上60歳未満の加入者が対象となる介護分保険料(介護保険のため)の3つがあり、それを合計した分を支払います。
それからもう1つの「国民健康保険組合」が運営しているタイプは、薬剤師、建築、土木など、同じ業種についている人たちを主会員とする形式です。フリーランスの場合は「文芸美術国民健康保険組合」に該当する可能性が高いです。こちらについては以下に詳しくご説明します。
会社の保険の任意継続
社会保険(被用者保険)はもちろん一般の企業に所属している人が加入する保険であり、原則的にフリーランスは加入できません。
しかし、もしも会社員からフリーランスになった場合は、これまで会社で加入していた社会保険を任意継続することができます。退職日までに2ヶ月以上継続して社会保険に加入していれば、任意継続できる権利があり、2年間はその社会保険のままで生活できます。
任意継続することがすすめられる人は、扶養家族が多い人です。国民健康保険の場合は、家族全員の保険料を納付しますが、任意継続の場合は、一定の要件を満たせば、扶養家族の保険料は負担しなくても良いのが大きなメリット。そのため扶養家族が多い場合などは、こちらの方が得になります。
しかし「任意継続」にはデメリットもあります。最長で2年までしか継続できないことと、滞納に非常に厳しく、1日でも支払いが遅れたら脱退させられてしまう点です。それから、会社員だった時には会社と折半して保険料を支払っていましたが、それが全額自己負担になるため、保険料がほぼ倍になることを押さえておきましょう。
家族の扶養に入るという選択肢もある
家族(配偶者・子供・孫・兄弟姉妹など)が健康保険組合に加入している場合、その人の扶養に入ることもできます。家族の被扶養者になった場合、あなた個人は保険料を支払う必要がなくなるため、結果として「国民健康保険」や「任意継続保険」より大幅に保険料を安くできるのです。
ただし、家族の扶養に入るためには、一定の基準をクリアしなければなりません。一般的に、フリーランスとして月収10万8,000円、年収130万円を超えていない人に限り、被扶養者として認められます。詳しい条件は家族が加入している健康保険組合に確認しましょう。
収入が上記より少なければ、家族の扶養に入ったほうが断然お得です。社会保険に加入している家族がいるなら、必ずチェックしておきましょう。
あなたの保険料を安くする方法は?
フリーランスの人が保険料を安くするには、どのようにすれば良いのでしょうか。
その方法は主に2つが考えられます。
保険料の安い自治体に引っ越す
実は自治体の差は意外と大きく、最大で年間20万円以上も差があります。
フリーランスだからこそ、住む場所を選ばずに仕事ができるメリットを生かし、保険料負担が少ない自治体に引っ越すのも一つの手です。
こちらのサイトで手軽に保険料が計算できます。
国民健康保険組合に入る
先に述べましたが、市区町村が母体の国保ではなく、国民健康保険組合が母体の国保にするという方法があります。文芸や美術、著作などの活動などに従事していて、組合加盟団体に入っていれば、その家族も加入できる保険制度です。収入にかかわらず保険料が一律という点が特徴で、月額は19,600円(30年度)です。なお、家族は月額10,300円、40歳から64歳までの介護保険被保険者は、月額4000円が必要となります。
市区町村の国保は所得に応じて金額が変わりますが、こちらは一律なので高収入であればあるほど得になります。目安として、所得が300万円を超えている場合には、市区町村が母体となる国保よりも得になると考えられるので、文芸美術国民健康保険組合への加入を検討しましょう。
文芸美術国民健康保険組合のサイト
民間の保険サービスは必要か?
フリーランスとして働く場合、病気や怪我に対する健康保険だけではなく、民間の保険サービスに加入するのもおすすめです。
ウイルス感染や機器紛失によって機密情報が漏洩したり、納期遅延や納品物のミスによってクライアント企業が実害を被ったりしたとき、フリーランス相手でも損害賠償を請求される可能性があります。
賠償金額が個人の支払い能力をはるかに超えるケースもあるため、万が一のトラブルに備えるという意味でも、民間の保険サービスはチェックしたいところです。
有名なものだと、フリーランス協会が提供している「ベネフィットプラン」があります。補償内容はもちろん、サービスや特典も充実しているため、フリーランス初心者にもおすすめです。
また、PE-BANKでも「共済会制度」や「健康サポート」など、さまざまな福利厚生サービスを提供しています。こちらも手厚い補償やサポートを受けられるため、安心して加入できるでしょう。
以下では、各保険サービスの概要も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
PE-BANKの福利厚生について
PE-BANKでは、スキルアップ教育や確定申告のサポートに加えて、フリーランス向けの福利厚生サービスも充実しています。
共済会制度では、病気や怪我に備える「所得補償手当て」や新たな挑戦につながる「起業支援貸付制度」など、健康・ビジネスを両面から手厚くサポートします。
また、健康サポートを利用すると、定期健康診断の受診費やインフルエンザ予防接種費用、フィットネスクラブの利用料などの補助金を受け取ることが可能です。
フリーランス協会の保険
フリーランス協会の「ベネフィットプラン」に加入すると、自動的に「賠償責任保険」が付帯されます。情報漏洩や納期遅延、業務中の対物・対人事故などに対して補償が適用されるため、受注側(フリーランス)はもちろん、発注側(クライアント企業)も安心です。
また、病気や介護で働けないときに保険金を受け取れる「所得補償プラン」や、報酬トラブルに関する弁護士のサポートを受けられる「フリーガル」など、任意加入の保険サービスもあります。
まとめ――保険に入らないことはできないのか?
以上、今回はフリーランスの方の社会保険についてご説明してきました。
日本の健康保険制度は強制型なので、あなたも何かしらの社会保険に加入しなければいけません。もし保険料の滞納を続けていると、短期保険証に切り替わり、保険証の没収や給付そのものの停止、さらには財産の差し押さえなどの処分が行われることもありえます。
身体が資本となるフリーランスにとって、万が一の備えをしておくことはとても重要です。節約できる方法があれば賢く節約しつつ、いつでも病院に行ける状態を整えておきましょう。