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3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-

3Dプリンタキットの選び方 part2 ー あてにならないスペック表

みなさんこんにちは。PE-BANK所属プロエンジニアの藤井光晃です。
今回は、前回の続きで3Dプリンタのスペック表について解説していきます。

スペック表の中には参考になりそうでならないものが多いので、注意する必要があります。

購入しようとするときに参考にするスペック表が当てにならないなんてどうしたらいいんだ・・・と迷ってしまいますが、どれが当てにならないか知った上で、対処方法が分かれば良い3Dプリンタを選ぶことができるはずです。

まずは、何が参考にならないか分かるように、理由とともに解説していきたいと思います。

よい3Dプリンタかどうかはスペック表だけでは判断できない

家電やPCを選んで購入するときには、主にスペック表を見ながら性能を比較して購入する場合が多いのではないでしょうか?

3Dプリンタの場合は同じような方法で判断しようとしても十分によい判断ができません。 スペック表にうまく性能が反映されておらず当てにできないものが多いためです。

3Dプリンタのスペック表の項目も製品によって異なります。

例えばAliExpressの商品説明だと自動翻訳がかかっていることもあり日本語として不自然な記述が目立ちます。

AliExpressで販売されている3Dプリンタの商品説明抜粋


スペックの項目の名称はメーカーや製品それぞれで微妙に異なりますが、主によく掲載されているものは以下のとおりです。

  • •最大印刷速度
  • •最大印刷サイズ
  • •最大レイヤーサイズ
  • •最小レイヤーサイズ
  • •フレームの材質
  • •エクストルーダーの数
  • •ノズルの直径
  • •ディスプレイの有無
  • •SDカードが使えるか
  • •使えるフィラメントの材質
  • •など


それっぽいスペック表があるので、これをみて性能の高いものを買えば、よい出力ができる3Dプリンタが手に入りそうに思います。 しかし、これが結構当てになりません。 考えてみるといろいろ疑問が湧いてきて、これは一体何を表しているのか微妙なものがあることに気づきます。

一つずつ解説していきます。

・大印刷速度と書かれているがその速度での品質は分からない

スペック表にある最大印刷速度とは何でしょうか? 印刷する場合のヘッドのXY軸方向の最大の移動速度をmm/sで表したものです。

印刷速度は速ければ速いほど短時間で出力を終えることができ効率的です。 その最大である最大印刷速度が速ければ一見よさそうに見えます。

しかし、この最大印刷速度という数値はメーカーによってとらえ方が違います。 ほとんどの製品では、単純にモーターでヘッドを動かせる最大の速度を書いているに過ぎない場合が多いようです。 つまり、その速度で出力した際の、出来上がりの品質については全く考慮しておらず、どんな品質であるのかは不明な場合が多いのです。 もし、最大印刷速度付近の速い設定で出力し、作るのにかかる時間が短く済んでも、それが品質が悪く使い物にならなければ意味がありません。実質その速度では出力できないのと同じです。

そういった理由でスペック表の最大印刷速度は当てになりません。 大切なのは「品質が問題ないレベルで出力できる実質の最大印刷速度」ですが、それはスペック表には書かれていません。

品質が問題ないレベルで出力できる実質の最大印刷速度を速くするには、次回で述べる精度やフィラメントの性質・湿度などについても考慮する必要があります。

・最小レイヤーサイズで出力したときの品質はやっぱりスペック表だけではわからない

3Dプリンタはレイヤーという層を重ねて形をつくります。

このレイヤーのサイズが大きいと層の大きさが大きくなり、層がよりくっきり見え、ギザギザが目立つことになります。 レイヤーのサイズが小さいと層の大きさが小さくなり、層があまり見えず、よりキメが細かくなります。

そのためスペック表に書かれている最小レイヤーサイズが小さいほど、層が小さく綺麗に出力できそうに思えます。 しかし、これも最大印刷速度と同じで、やはり最小レイヤーサイズで出力した場合の品質については示されていません。 ただ単にそのレイヤーサイズを設定して出力させてみることができるだけで、実際にやってみると品質が低く使い物にならない場合もありえます。
最小レイヤーサイズを決めるための判断基準もそれぞれのメーカーで違い、その判断基準は公開されていないことが多いです。 そのため最小レイヤーサイズが同じ値の3Dプリンタでも、メーカー・製品によって出力したものの品質はかなり違います。

つまり、最小レイヤーサイズについてもスペック表の値は当てになりません。

・スペック表のフレームの材質だけでは剛性があるかどうかは判断しきれない

フレームの剛性がしっかりしていて出力する時のブレを抑えることができるならば精度は良くなります。 しかし、剛性はスペック表にかかれている材質だけでは、やはり十分に判断することができません。

フレームの材質は主に下記のものがあります。

  • •アクリル
  • •金属(アルミ・スチール)
  • •2020アルミフレーム


これらを見るとアクリルよりも金属フレームのほうが剛性があるように思えます。 そう思って実際に購入してみると、思った以上に薄い金像板で作られていて、アクリルフレームとあまり精度が変わらないような製品もあります。

アクリルフレームを採用したPrusa i3


しっかりした剛性を確保するには、材質だけでなく、その構造も重要です。 たとえ紙であってもダンボールになると強度が上がるように、形状・構造によっても剛性が上がるため、よく確認しておく必要があります。

剛性を確保するためには、材質だけでなく厚み・形状・構造がしっかりしているかを写真・商品説明などから読み取る必要があります。

剛性を高めるための構造になっている2020アルミフレーム

まとめ

このように3Dプリンタのスペック表に書かれている項目には当てにできないものも多く、スペック表以外の特徴についても考慮しないと良い3Dプリンタを選ぶことはできません。

次回は、スペック表以外で見るべきポイントについて解説していきます。

藤井 光晃

藤井 光晃

PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。