プロエンジニアカンフェレンス2017 ~フリーITエンジニアによる秋の祭典~ イベント開催レポート | ITフリーランスエンジニアの案件・求人はPE-BANK

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プロエンジニアカンフェレンス2017 ~フリーITエンジニアによる秋の祭典~ イベント開催レポート


2017年11月18日、大阪市福島区の新梅田研修センターで、「プロエンジニアカンファレンス2017」が開催されました。

本イベントは、「もっと1年間の活動成果を発表する場を」と関西支店のプロエンジニア・木村憲規さんが発起人となり始まった取り組みです。
第2回目となる今回は、ジャーナリスト佐々木俊尚さんの特別講演がオープニングを飾り、今後フリーのITエンジニアとして生き抜く心構えを説いてくださいました。

その他、主にPE-BANK関西支店で開催された勉強会の成果報告を中心に、全国各地のプロエンジニアの皆さんが、研究活動の紹介やデモンストレーションを披露。プロエンジニアをはじめ、企業勤めやフリーへの転身を検討中のITエンジニアなど約30名が集い、時に熱心にメモをとりながら、講演やプレゼンテーションに聞き入りました。

特別講演

これからのプロエンジニアが考えるべき『生きていくためのセーフティネット』とは

~IoTとAI、シェアリングの時代に必要なスキルとライフスタイルを考える~

作家・ジャーナリスト 佐々木 俊尚(ささき としなお)氏

ヒエラルキーからプラットフォームでの仕事へ

フリーのITエンジニアの働き方を考える上で、佐々木氏はまず、“テクノロジーの進化” “ライフスタイルの変化”の2つの構造変化を理解し、「今後ITはどういう方向性に向かうのか」を認識することが大事と投げかけました。

1995年のWindows95の発売により情報通信テクノロジーが一般社会に普及してから22年。その間で産業構造は、「垂直統合から水平分離へと変化した」と言われています。例えば製造業でいえば、ヒエラルキー構造が消滅し、プラットフォーム上で仕事が行なわれるようになりました。

家電ベンチャーの「Cerevo」は、持ち歩けるスピーカーやロボットタイプのデスクライトなど独創的な商品を送り出すファブレスメーカー。これまでは家電を作り始めようと思えば、基盤やモジュール、金型なども含め億単位の初期投資が必要でしたが、中国のアリババによるマッチングのプラットフォームによって、数百万の投資でスタートが可能に。また流通もグローバル化することで、圧倒的な低コストで世界中へ商品が流通できる構造ができ、この動きは加速すると語りました。


車=個体を、サービスとして捉える時代

ところがさらに今、新たな垂直統合への回帰が起きている、と佐々木氏。アメリカの「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリー氏の論を引用しながら、「個体だった車が、カーシェアリングサービスなどによってオンデマンドサービスへと姿を変えている。スマホで呼び出して10秒で自動運転の車を手配できるようになれば、車を持つ必要がなくなり、車を個体から“サービス”と捉える方向に変わってくのではないか」という説について紹介。“自動運転” “EV” “高度な配車サービス”の3つが自動車産業に変わる可能性があり、これをまとめたものが新しい垂直統合となることを示唆しました。


一方でこの新たな垂直統合の時代に、そのシステムを統括するのは誰か?というのは難しいテーマ。例えば、さまざまなプラットフォームで読まれるネットメディア「BuzzFeed」。ただのコンテンツ提供者ではなく、どんな記事がどんな経路でどれだけ読まれているか細かなデータを抽出し、精緻な分析が可能で、ビッグデータさえもコンテンツ側が握れることを実証したと言われています。何をコアとして新しい垂直統合を作るのかのヒントがそこにあると佐々木氏は語ります。


精緻なデータ分析、人知を超えたAIの可能性

さらに、そのデータをどこまで精緻に分析するか、で出てくるのがAIの話です。これまで一般的なデータ検証は、事象に対して有効な仮説を立て、計算によってそれを証明するものでした。その立てるべき仮説がデータで自動的に抽出されるようになってきているわけです。例えば、HITACHIでは、行動経路や出会った人の履歴が全て記録されるデバイスを2年間9000人にぶら下げてもらい、成績優秀なチームの要因を探る実験を実施。驚くべきことに、その要因は、マネージャーやエース社員ではなく、非常勤の事務スタッフの存在にあったと言います。同じく、とあるホームセンターでは、AIの導き出した分析により、特定の場所に従業員を立たせただけで顧客単価が前月比15%アップを記録。しかし、その因果関係は説明できないもので、人知を超えたAIの可能性を示しています。


あらゆる場所からIoTによってデータを収集し、AIで分析し、特徴を抽出して予測していく、このコアなところにディープランニングのデータ分析が使われるのではないか、と佐々木氏。これによって新たな垂直統合という大きな空間を形成するところの強度が高まっていく期待がある。それが、この3年~5年と中期的に向かっている道筋だとしました。


最後は、その方向が働き方にどう影響するのか?について、「ホラクラシー組織」の理論を紹介。役職などの上下関係をとりはらい、目的のあるチームを構築し、目標を達成したら解散、それを繰り返す。こうしたフリーランスのチームの作り方が、企業体にも取り込まれていくと言われています。それこそが新しい垂直統合の時代の一つの組織のあり方だと説き、プロエンジニアのみなさんに熱いエールが送られました。

<佐々木氏の講演内容を受けて、参加者の反応>
◎非常におもしろかった。自動車が、個体から流体(サービス)の一部になるという話は、今後人材もそうなるのでは?と感じた。日頃、軽自動車に乗っている人が、キャンプに行くときだけワゴン車を借りるように、フリーランスは、その組織では足り得ない部分を補う=“借りられる”立場。スキルを高めるべき理由がよく理解できた。

◎個人事業主として、システムや組織を忌避するでものまれるでもなく、利用する主体を持つということは簡単なようでとても難しいと思った。

◎フリーランスの仕事のやり方が、ヒエラルキーではなくフラットな組織構造というのは皆さんも理解していることと思うが、その強みが具体事例で共有されたことで、この方向で進んでいていいんだという裏付けが生まれたように思う。非常にいい話だった。

プロエンジニア講演

ITエンジニアのためのプレゼン資料作成ノウハウ

関西支店 木村 憲規氏

勉強会の講師経験も豊富な木村氏からは、クライアントへの提案や勉強会資料などを作る上で役立つプレゼン資料作成ノウハウが共有されました。

ポイントは、「わかりやすさ=情報の認識に要する時間が短い」ということ。
1スライド1メッセージに絞る、テキストは体現止めに、配色は少なく、など伝えたいことを明確に伝えるコツが伝授され、「さっそく使えそう」と好評を博しました。

コボラーがJavaの勉強したらこうなった

関西支店 田中 秀和氏

月1の勉強会を通じてJavaへのスキルチェンジを試みる田中秀和氏による中間報告が行なわれました。

4つの部を覚えれば事足りたCOBOLに対して、クラスファイルも大量で覚える構文も多いJavaのマスターに苦労していると報告。
それを受け、講師の一人である木村憲規からは、「オブジェクト指向を学べば、多言語の構文をすべて覚えなくともいい」とアドバイスがあり、再度セオリーから学び直すことが提案されました。

グループウェア勉強会

関西支店 藤井 聴勇氏

コラボレーションツールの習得を目指し、より良い使い方を議論するグループウェア勉強会。
2017年度に開催された「Swift勉強会」や、UMLを0から学ぶ「デザインパターン勉強会」の総括がありました。

また、オンラインエディタの活用やGitHubを使った簡単なプレゼン資料の作成の勧めなど勉強会の便利ツールも紹介。
その他、藤井氏が注目を寄せている、シングルバイナリとして提供できる「Go言語」やBitcoinで導入されている「キーブロックチェーン」について、その魅力や今後の可能性について語られました。

プチMAP勉強会 in PEC 2017
数学を身近に取り入れてみよう。脳トレから日常生活まで!!

九州支店 白銀 太可志氏

27+18を解く方法は、例えば(3×9)+(3×6)=3×15=45など多数存在します。

解の導き方は一つではない=物事をいろんな角度から見れることを学ぶのがこの勉強会の狙い。

数学的な知識や思考を培うことで、バグの要因を発見しやすい手順などもおのずと身につく、と白銀氏。
問題を一緒に解いていく参加型の勉強会で、思いもよらない解き方に感心する声も上がっていました。

※MAPとは Mathematics Assists (And) Programming logic の略

ソフトウェアエンジニアがやったこともないのに3Dプリンタ勉強会をして世界が広がりすぎた話

関西支店 藤井 光晃氏

オープンソースで作れる3Dプリンタの自作勉強会について総括。
藤井氏は全く知識のないところからCADをマスター。

CNCの知見も高まり、木製オリジナル3Dプリンタの開発や、Arduinoを用いた電子工作も可能に。

勉強会を通じて得た人脈から、IT案件の開発依頼が舞い込んだり、芸能人と会う機会が生まれたり、新しいチャレンジがもたらすメリットについて力説されました。

ライトニングトーク

トレンドの技術や研究中のテーマについて5分ほどプレゼンテーションを行ない、それに対して、「どんな分野に応用がきくか?」など議論を交わすライトニングトーク。
3つのテーマトークが行なわれました。

ASP.NET Coreと Visual Studio for Mac

関西支店 木村 憲規氏


2016年公開のMacやLinuxマルチプラットフォームで動作する「ASP.NET Core」について、「ASP.NET」と比較しながら概要を紹介。
木村氏が実際に「Visual Studio for Mac」を使ってASP.NET Coreアプリを作り、“実装はASP.NETと大きく違わない” “Visual StudioとXcodeを足したようなUI ”といった所感を述べました。

Three.jsを使った電子モデルによる多面体計算 特許申請の顛末

関西支店 石原 融氏

正方形の空間に知らない人同士が複数名入ると、自然と等間隔に距離をとるが、これを3次元で行なうとどうなるか?を研究し続けてきた石原氏。

3Dコンテンツを制作できるJavaScriptライブラリ「Three.js」を用いて球面上の電子の動きの法則を検証し、多面体生成の計算式を見出されました。
ただ、残念ながらアメリカやイギリスでは既に研究し尽くされており特許申請は断念することになったそうです。

dev.toが与えたインパクト

関西支店 木村 憲規氏


“爆速”具合がwebアプリケーション開発者の間で話題になっているアメリカのコミュニティサイト「dev.to」の紹介がありました。
アクセス元から一番近い距離にあるサーバーから自動的にコンテンツを配信する「CDN」による高速化の仕組みや、その話題性から「UI/UXにとっていかにスピードが重要か」について説かれました。

展示・デモンストレーション

展示エリアでは、中部支店の平岩明憲氏、大橋由幸氏による、ドローンのさまざまなデモンストレーションが行なわれました。

大橋氏がデモを披露した“音声認識によって操作可能なドローン”は、もともと事故や病気で手を動かせない方から「片手で使えるドローンを作って欲しい」という声が開発のきっかけ。
今後も改良を重ね、介護分野など有効活用される場を広げていきたいと展望を語られていました。

参加者からは、「有意義な時間を過ごせた」「プレゼン資料作成マニュアルがとてもためになった」などの感想が寄せられ、「もっと自分も学ばないと」刺激を受けた様子がうかがえました。
発起人の木村憲規氏は次年度以降の開催にも意欲的で、どんな形であれ ITエンジニアが「発表する場」を作り続けていきたいと語られました。

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