「クラウドヂカラ #Alexaセミナー -Alexaで世界をより良い場所に-」イベント開催レポート
5月25日、東京渋谷区のイベントスペース「TECH PLAY SHIBUYA」で、セミナーイベント「#Alexaセミナー - Alexaで世界をより良い場所に -」を開催しました。各社から発売され、普及が進むスマートスピーカー。今回のセミナーは、そんなスマートスピーカーの1つである「Amazon Echo」シリーズの機能を拡張する「Alexaスキル」をテーマとしたものです。
開発者やユーザーが独自にEchoの使い方を広げられる「Alexaスキル」は、将来的に「スキル内課金」を利用できるようになる可能性もあり、新たなエコシステムとして今後注目が集まるものと考えられます。このAlexaスキルについて、Amazon Web Services(AWS)をはじめとするクラウド開発・コンサルティングを行うセクションナインの吉田真吾氏と、AWSやAlexaスキルを用いた開発に深い造詣をもつ岡本秀高氏に解説いただきました。さらに、イベント参加者が自らオリジナルのAlexaスキル開発に挑戦するワークショップも実施しました。
将来、対話モデルを設計するVUIデザイナーが必要に
複雑なAI処理を行うスマートスピーカーだけに、その機能を拡張するAlexaスキルの開発も難しいものになると思うかもしれません。しかしセクションナインの吉田氏は、ユーザーとEchoが対話して機能を実現するAlexaスキルの開発は、驚くほど簡単に始められると話します。必要なのは、「Amazon開発者ポータルアカウント」と「AWSアカウント」、それに「Amazon.co.jpアカウント」の取得だけ。あとはスマートフォン用の「Alexaアプリ」があればよく、パソコン上で動作を試すだけならEchoすら必要としません。
ただし、Alexaスキルの核となる「対話のデザイン」は「思いつきで作っていけるほどシンプルじゃない」と吉田氏。すぐに実開発に入るのではなく、「ユーザーの目的とストーリーを設定」し、「台本を作成する」ことがまず必要で、さらに対話のフロー図を描くことも勧めます。例えば、ユーザーがEchoを使って情報を得たいと考えたとき、具体的にどう話しかけると、どういう流れで対話が進み、結果としてどういう形で情報が得られるのか。事前に綿密に設計しないと実用しにくく、使われないスキルになってしまうと言います。
特に台本を作成する時は、「実際に声に出して確認してみること。どのくらいの長さで返すのが気持ちいいか、シナリオを詰めていく」ことが大事だと言います。人間同士もそうであるように、Echoとの対話でも、会話のリズムや受け答えの仕方がとても重要。Echoからの返答があまりに長かったりすると、ユーザーが欲しい情報が得られるまで時間がかかり、次の対話にも進めないためストレスが溜まることになるでしょう。
こうした対話モデルの設計は、Alexaスキルの開発には必須のものだと吉田氏。想定されるEchoとの会話体験をあらかじめ設計して作り込む能力が開発者には求められることになり、その意味で今後、音声対話に関わるインターフェース設計を専門とする「VUI(Voice User Interface eXperience Designer)デザイナー」が活躍するだろうと予言しました。
インターネットが一般化した後に生まれたWebエンジニアや、iPhone登場以降に生まれたiOS(アプリ)エンジニアなどのように、日々新しい職業が出てきている、と吉田氏。スマートスピーカーの対話モデルを適切に設計するVUIデザイナーも、いずれ新しい職業として認知されることになるのではないか、と話しました。
吉田氏が開発中の、Echoのなかで妖精を育てるゲーム「エコちっち」を実演。ある程度複雑なAlexスキルでは、対話における現在の状態を記憶するステート制御が重要であることを訴えました。
対話モデルを簡単に作れる「Storyline」を紹介
続いて登壇した岡本氏は、Alexaスキルの開発を容易にする対話モデル設計ツール「Storyline」の具体的な活用方法について解説しました。現在、Alexaスキルを開発するためのツールにはAmazon公式の「Alexaコンソール」がありますが、このほかにサードパーティ製のツールとして「Storyline」があります。岡本氏によると、Alexaスキルの開発を2つのステップに分けた場合、「音声をどう変換するか」と「どう実装するか」が必要で、特に重要な「音声をどう変換するか」を容易に設計できるのがStorylineだと言います。
岡本氏も吉田氏と同じように対話の台本を作ることは重要だと話しますが、Storylineではその台本をフローチャート式に組み立てることができ、簡単な操作でAlexaスキルを作り上げることができるとのこと。この台本をスキル化する際の注意点として同氏が挙げたのが、「より自然な会話になっているか」「ユーザーの想定外の発話に丁寧に対応するか」「ユーザーがスキルを利用するところを観察したか」といった点でした。
「自然な会話」については吉田氏も同様の説明をしていた通り。さらに「ユーザーがスキルを利用するところを観察」するのは、開発者が思い込みで作り込んでいる部分が実際のユースケースに正しく当てはまっているのかどうかを確認するためにも重要です。会話として成立している部分としていない部分を明確にし、そのブラッシュアップに役立つと言います。
その他、対話時に何回か続けてやりとりし、命令実行に必要な「変数」をAlexaスキルに教える際には「Dialogインターフェース」が便利であること、豊富に用意されている効果音集「Alexa Skills Kit Sound Library」をうまく活用することが完成度の高いAlexaスキルにつながること、同じ内容の対話でもEchoからの返答をランダムで変えるなどして「人間らしさ」を加えることなどもアドバイス。「これが音声操作でできたら楽なのに」という「ひらめき」を大事にし、またユーザー目線の感覚も忘れることなく開発することで、「すでに海外で利用できるスキル内課金が日本でも始まったときに、いいスタートダッシュを切れるはず」と語りました。
Alexaスキル開発に挑戦するワークショップも開催
イベントの後半は、自由参加のワークショップを開催。数人ずつでチームを作り、各チームで各種アカウントを作成して、まずはStorylineで簡単なAlexaスキルを作成。その後、30分ほどかけてオリジナルのアイデアでAlexaスキルを開発しました。まずは配布された模造紙に台本やストーリーを直接書き込んだり、付箋に書いたものを貼ったりしていき、アイデアをフローチャート式にまとめていきます。その内容をStorylineに入力して、パソコンの画面上で対話をテスト実行させるという形です。
吉田氏が、アカウントの登録から簡単なAlexaスキルを作る際のStoryline上での操作方法などを丁寧に解説しつつ、アイデアやフローチャートの具体的なまとめ方も手取り足取りレクチャー。予定通り開始から30~40分後には、スタート地点と移動手段、ゴール地点を話しかけるとその間の距離を教えてくれるAlexaスキルや、声で命令して宿泊施設を予約できるようにするAlexaスキルなどが発表されました。
全てが完成というわけには至らなかったものの、ランチに食べたい料理ジャンルを話すとランダムでメニューを提案してくれるAlexaスキル「昼食ルーレット」は、実際にパソコン上で実行してその挙動を確かめていました。参加者のみなさんは、専門知識がなくても容易にAlexaスキル開発ができることを実感できたのではないでしょうか。
数名ずつ複数の班に分かれ、みなさん役割分担しながらAlexaスキル開発を進めました。
個人でAlexaスキルを開発している坂本陽香氏。「今日の格言」をしゃべるAlexaスキルの開発を通じて得られた気付きや苦労などを語っていただきました。
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