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3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-

3Dプリンタキットの選び方 part3 – スペック表以外で見るべきポイント

前回「3Dプリンタキットの選び方 part2 – 3Dプリンタはスペック表だけで判断できない」では、3Dプリンタのスペック表に書かれている項目には当てにできないものも多く、精度や実用になる品質での最大出力速度については判断しきれないことをお伝えしました。

スペック表が当てにならないならば、それ以外から判断するしかありません。

今回は、スペック表以外で考慮すべきポイントについて解説していきます。

前回解説した良い3Dプリンタとは

前々回「3Dプリンタキットの選び方 part1 – よい3Dプリンタとは」では、よい3Dプリンタとな何か知ることで、よい3Dプリンタを判断できるように解説しました。

そこでは、私が思う良い3Dプリンタキットの特徴として主なものとして次のように挙げました。

  • •精度が高い(キレイに出力できる)
  • •最大出力速度が速い
  • •多種のフィラメントが使える(ABS系を使うためのヒートベッドがついている)
  • •LCDがついていてSDカードが使える
  • •汎用的で入手し易い部品が使われている
  • •メンテナンス・修理がしやすい
  • •改良がしやすい
  • •メーカーサポートがしっかりしている


この中でスペック表では判断しきれないものは以下です。

  • •精度が高い(キレイに出力できる)
  • •最大出力速度が速い
  • •汎用的で入手し易い部品が使われている
  • •メンテナンス・修理がしやすい
  • •改良がしやすい
  • •メーカーサポートがしっかりしている


ほとんど判断できない感じですね。。。。

これらは解説・写真・評価などから見て取れる構造などから読み取る必要があります。

一つづつ、どのように読み取り判断していくべきか解説していきます。

・精度が高い(キレイに出力できる)

この精度が高いかどうかの判断が一番難しいと思います。

精度は、3Dプリンタがブレなく正確に動くかどうかを表します。 精度が高ければ、正確に出力することができ綺麗に出力することができます。

その精度を示すための基準があれば良いのですが、残念ながらありません。

前回お伝えしたように、一見精度を表しそうな最大印刷速度・最大レイヤーサイズという項目がスペック表にありますが、これも当てにありません。 そのため、剛性・機構などいろいろ考慮して精度が高いかどうか感覚的に判断するしかありません。

精度が高い3Dプリンタを選ぶためには、フレームやロッドなどの構造に剛性がある構造で、モーターを動かしてもヘッドがブレないかどうか判断することが大切です。 3Dプリンタ自体があまり剛性がない場合は、モーターの動きなどにより3Dプリンタのパーツが少し歪んだりビビったりすることで、予期せずヘッドが振動し思ったとおりに動かず、出力したものが歪んでしまい精度が落ちるためです。

また可動部分もブレないような構造・剛性をもっている必要があります。 たとえば、Z軸を上下させるための長いネジが真っ直ぐになっていて、ネジとネジ穴の隙間がすくない構造であれば、ブレが少なくなり精度が上がります。 そして一般的な寸切りボルトではなく、台形ねじと言われるとネジ山が台形になっている長いネジを使うほうが精度が高いため、最近の3Dプリンタキットではほとんど台形ネジになっています。 さらに同じ台形ねじを採用したものでも、モーターにフレキシブルカップリングで接続されているものよりも、モーターに直接台形ねじが接続されているもののほうが回転によるブレが少なく精度が高いです。

このように使われている部品・構造を写真などから判断して、総合的に精度が高くなるかどうか判断していく必要があります。

商品の写真や説明から剛性を読み取らなければならない


・最大出力速度が速い

前回、スペック表の最大出力速度は、その速度で出力した品質が書かれていないので当てにならないとお伝えしました。 大切なのは「品質が問題ないレベルで出力できる実質の最大印刷速度」です。 実質の最大印刷速度を速くするには、主に精度とエクストルーダー・ホットエンド・フィラメントについて確認しておく必要があります。

まず、速い速度でも問題のない品質で出力ができる精度を持っているかどうかを考慮する必要があります。 多くの場合、出力の速度を上げるとヘッドのブレが大きくなり出力したものの品質が下がります。 30mm/sの速度での出力が問題なくても、60mm/sで出力したら層が荒れたり、ブリッジの部分が乱れて汚くなってしまったりすることもあります。 つまり、速く出力したい場合は、速く出力できるだけの精度もないといけません。

さらに出力の速度に合わせて、問題なくフィラメントを絞り出せるかも考慮する必要があります。 ホットエンドの加熱が追いついて、フィラメントが十分に解けて、さらにそれをしっかりエクストルーダーで絞り出すことができる必要があります。

私の経験上、E3Dという汎用的でよく使われるホットエンドの場合は、フィラメントにもよりますがヘッドの速度を80mm/s以上で出力しようとすると、フィラメントを熱で溶かすのが追いついてこない場合が多いです。 E3Dだけではなく多くの3Dプリンタのホットエンドが最大でそれくらいの速度にしか対応できないと考えるのが無難なのかもしれません。 最大でも80mm/sで出力できれば合格で、それ以上の場合は運が良ければくらいに思っているとよいと思います。

ホットエンドの形状が汎用的なものであれば、どれくらいの速度で出力できるかネットの情報からある程度判断することも出来るでしょう。 独自のものが使われている場合は買ってみないと分からない場合も多いので、購入した人の評価を参考に推測するくらいしか方法はありません。

・汎用的で入手し易い部品が使われている

汎用的な部品が使われていれば、壊れた時の交換部品が手に入りやすく、使っている人も多いため情報も入手しやすいので重要です。  しかし、汎用的な部品なのかはスペック表に現れないことが多く、主に写真や説明から判断する必要があります。

まずRepRap.orgに情報があるものや、Prusa i3で元々利用されているようなものは汎用的な部品と判断できます。 AliExpressなどの販売サイトで多くのメーカーから販売されているものも汎用的な部品と判断しても良いと思います。

3Dプリンタキットではヘッドの部分にあたるフィラメントを出力するホットエンドとエクストルーダーの部分は、メーカー独自の形状にしているものが多いです。 その場合、そのヘッド部分だけメーカーが販売している場合もありますが、いつまで販売しているかはわかりません。 もし販売が終わったあとに故障してしまったら、交換して修理することは難しくなるので注意が必要です。
またホットエンドの部分は定期的なメンテが必要で壊れやすい部分でもあります。 フィラメントのつまりなどが起こると分解しないといけなかったり、ノズルが摩耗したり詰まったりすることがあります。 そのため、定期的に交換する方法を確保しておきたいところです。

汎用的なホットエンドであるE3Dを利用しているキットであれば、故障や詰まりが発生しても対応しやすいです。

汎用的で入手しやすいホットエンド E3D


フレームも独自のCNCでアクリルや金属板を切ったものではなくて、2020アルミフレームを使ったものであれば、汎用的な部品なので不意の事故により歪んだり・割れたりしたときでも交換部品を入手しやすいです。

メインボードもRAMPS1.4やMELZIやMKSなど汎用的なものであれば、過電流などでチップが焼き付いても、入手しやすいため交換対応が簡単でコストも抑えられる場合が多いです。

これらの特徴はスペック表に書かれることもありますが、多くは商品説明・紹介写真・ユーザー評価などから読み取ることができます。

・メンテナンス・修理がしやすい

メンテナンスしやすいかどうかは、前述した汎用的で入手しやすい部品が使われているかが重要です。

汎用的な部品が使われているとメンテナンス方法についてのノウハウもネットから収集しやすいです。 また、交換する必要が生じた時に部品を入手して交換しやすくなります。

独自のものであっても構造がメンテナンスしやすいように出来ているものもあるかもしれませんが、その場合ネットからの情報収集は難しくなると思われ、基本的にサポートから情報を得ることになると思っていた方がよいと思います。

サイトの商品説明の部分や付属のマニュアルにしっかりとメンテナンス方法が書かれていれば良いですが、それは買ってみなければ分からないことが多いです。

・改良がしやすい

3Dプリンタには様々な改良があり、行いたい改造ができるかどうか判断する必要があります。

改造は主にパーツを追加で取り付けるタイプの改造が多いです。 そのためパーツを取り付けやすいような構造になっているかどうかを写真などから判断する必要があります。 フレームに取り付ける場合は、独自の形状のフレームではなく2020アルミフレームのような規格に沿った形状のフレームであれば取り付けやすいでしょう。

またファームウェアを書き換えるタイプの改良もあります。 ファームウェアを書き換えればLCDの表示を変更したり、フィラメント切れセンサーを追加することもできたりします。 メインボードがMarlinなどの3Dプリンタ向けファームウェアが対応しているものであれば改良可能です。 たとえばRAMPS1.4やMKSなど汎用的なものであれば、ファームウェアを自分でカスタムし上書きできます。

メインボードについては商品説明から判断できる場合が多いです。 メインボードは独自のものっぽくしてあるものが多いですが、よく見ると端子を変えただけで汎用的なメインボードである場合も多いです。

メジャーな3Dプリンタ用ファームウェアMarlinが対応している汎用的なメインボードMKS


・メーカーサポートがしっかりしている

これは商品を購入した人の数やユーザーの評価などから判断するしかありません。

人気のある商品であれば多くの人が購入していることで、品質もよくメーカーサポートも安心である可能性が高いです。 悪い評価などがあるとメーカーサポートや品質に問題のある可能性があるので避けたほうが無難です。

問題が発生した時にサポートで対応方法を教えてもらったり、返金対応してもらう必要があるので、それが可能なサポートがありそうかユーザー評価をみて推測してから購入しましょう。

まとめ

スペック表以外もよく注意してみることで、よりよい3Dプリンタを購入することができるようになります。

とはいえ、以前お伝えしたように考慮することがかなり多いので、まずは勉強のつもりで人気のありそうなものを一つ購入することから初めてみてもよいと思います。 3Dプリンタキットを一つ購入してみて使っているうちに、ここがもっとこうだったらいいのにと思うところが出てきて、見る目が肥えてきます。 すると、次はもっとよい3Dプリンタキットを選ぶことができるようになります。

藤井 光晃

藤井 光晃

PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。

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