もしGoogleが銀行をつくったら ― Fintechの“今とこれから”が分かる「Fintech Night in 泉岳寺」レポート
9月16日、東京都港区のイベントスペース「STOCK」で、「Fintech Night in 泉岳寺」が開催されました。
金融とICTの融合により新しい金融の仕組みやサービスが実現するという、今や世界中で最もホットなテクノロジー分野の1つとなっている「Fintech」をテーマにしたこのイベント、2時間弱というコンパクトなプログラムながらも、濃密な情報が詰まった会となりました。
当日は、クラウド家計簿サービスなどを提供しているマネーフォワード 取締役 Fintech研究所長の瀧 俊雄氏が、Fintechが注目されている理由や、Fintechによって実現するであろう未来を語りました。
また、決済プラットフォームサービスなどを開発するSPIKEペイメント マネジャーの松倉友樹氏が、Fintechをはじめ、あらゆるシステム開発のエンジニアとして活躍し続けるためのノウハウを、自身の経験を踏まえながら詳細に明かしました。
世界はキャッシュレスに向かっている
株式会社マネーフォワード取締役
Fintech研究所長 瀧 俊雄(たき としお)氏
初めに登壇したマネーフォワードの瀧氏は冒頭、来場者に向かって「金融サービスで感動した時のことを思い出してほしい」と問いかけました。
2000年以降、インターネットバンクの利用が可能になった時に多くの人が「たぶん感動したはず」としましたが、今やネットバンクの存在は当たり前のものとなりました。
最近では「LINE Pay」のようなスマートフォン上で送金・決済できる仕組みが登場したものの、あまり大きな注目は集めておらず、「金融サービスに求められるハードルは上がっている」と瀧氏は話します。
しかしながら、LINE Payを含め既存業態におけるこのような新しい動きやイノベーションは、大手システム開発会社ではなく、設立5年程度の歴史の浅いベンチャー企業が次々に生み出していると同氏は指摘します。Fintechについてもベンチャー企業が主導していく可能性があり、例えば世界的なテクノロジー企業のGoogle/Facebook/Apple/Alibabaが金融事業、つまり銀行を設立することも否定できないというのです。
Googleが銀行をつくったとしたらどうなるのか。これまで多数のサービスを展開してきたそのブランドイメージから、おそらくは世界中のユーザーがこぞって口座を開設し、利用することは疑いようがありません。ただ、その一方でGmailなど他のサービスから収集されたデータを元に、「子供が生まれたことを察知し、住宅ローンや保険の契約を勧めてくる」といった可能性すら出てくる、と同氏は推測します。いずれにしても、こうしたメガベンチャーによる銀行事業への参入は多方面に計り知れないインパクトがあり、だからこそ他の企業もFintechへの流れを加速させているのではないか、と同氏は見ています。
また、Fintechのような新しいテクノロジーが話題なってきている背景には、ここ数年来のスマートフォンの進化と普及にともない、ユーザーがその使い方に慣れ始め、いつでもインターネットにつながる「強い武器」が手元にあることも考えられるとしました。
iPhone 7/7 Plusでついに日本国内でもApple Payが開始すること、2020年の東京オリンピックまでに国内のより多くの施設でクレジットカードを使えるようにしようという動きがある。
将来的には銀行自身が外部サービスから利用可能なAPIを提供するのではないか、とも話し、そうなるとネット通販のAmazonでは、商品を購入した際にAmazonが利用者の銀行口座から直接お金を引き落とす、といった仕組みが提供される可能性も示しました。
ただ、忘れてはならないのが「日本のお金の8割は60歳以上の人が持っている」こと。現状の20~30代の年齢層に最適化された金融サービス関連のアプリインターフェースを、高齢者がより使いやすいように工夫するなど、「誰に何を届けたいのか」をしっかり考える必要があるとも強調しました。
経歴や人柄ではなく、「信じられるのはコード」
株式会社SPIKEペイメント (メタップスグループ) マネジャー
松倉友樹(まつくら ゆうき)氏
次に登壇したSPIKEペイメントの松倉氏は、これまで一貫して開発畑を進んできた人物。
高校生の時からサーバーの構築・管理の仕事に携わり、大学ではシステム開発と運用を、大学卒業後もエンジニアとしてEC開発、新サービスの立ち上げ、ソーシャルゲーム開発と、多くの案件に携わってきました。
そんな同氏が語ったのは、現在関わっている決済プラットフォームサービス「SPIKE(スパイク)」における細かなプロジェクトマネージメントの手法と、エンジニアとして第一線で仕事し続けるために同氏が心がけている思考方法や生活スタイル、いわゆるライフハックなど、多岐に渡りました。
マネージメント手法については、10個の“小さな失敗”は1個の“中失敗”と捉え、いかに小さな失敗のうちに消せるかが大切であることや、「個人の成長=チームの成長=会社の成長」という意識をもち、「技術力×コミットメント」で表される「個人のパフォーマンス」をいかに高めていくかが重要なポイントであると話しました。
管理職としての立場から、人事におけるノウハウも紹介しました。例えば採用時に相手のエンジニアとしての実力を推し量る際、信じられるのは経歴や技術的な事の質疑応答より「コード」が重要であると述べ、さらに「Twitterのようなサービスを、あなたならどう作るか」といったケーススタディを提示してディスカッションすることも必ず行っていることを明かした。
最後は、ビジネスマンとして、人として常に成長し続け目標を達成するためには、どういう人生を送りたいのかをミッションステートメントとして形に残すことが重要であると訴えるとともに、同時に2つのことを実行する時間の効率的な使い方の例も挙げ、同氏が自身の人生に影響を与えたという本も紹介しました。
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