3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-
組み立て済み製品と組み立てキットどっちがいい?
みなさんこんにちは。PE-BANK所属プロエンジニアの藤井です。
先日、あのIT系メディアや様々な方面で引っ張りだこ。ギークなタレントで女優の池澤あやかさんと3Dプリンタの組み立てでご一緒させていただきました!
自作3Dプリンタを池澤あやか作ってみた前編 – キーマンズネット
自作3Dプリンタを池澤あやか作ってみた後編 – キーマンズネット
良ければこちらも是非ご覧ください!まさかご一緒させてもらえるとは……本当に夢のような時間を過ごせていただきました。
というわけで、いきなり話が脱線してしまいましたが、今回は、3Dプリンタを手に入れる方法と、組み立て済み製品と組み立てキットでは、どちらが良いかを考えていきたいと思います。
3Dプリンタは作ったほうが良いのか?
前回の第1回「3Dプリンタはオープンソースだから作れる!」では、実はFDM方式の3Dプリンタはオープンソースで仕様が公開されていて、自由に誰でも安価に作ることが出来る、ということをお伝えしました。
では、3Dプリンタを手に入れるためにはどんな方法があるでしょうか?
大きく分けて下記の2つが考えられます。
1. 組み立て済みの3Dプリンタを購入する
2. 3Dプリンタの組み立てキットを購入して自分で組み立てる
1は普通に家電を購入するように既に組み立てられている製品を購入する方法で、買ってきて梱包を解けば使える状態になります。
2は組み立てキットを購入して自分で組み立てる方法で、キットの説明書を読みながら自分で部品を組み立てて3Dプリンタを完成させなければ使えません。
この2つの方法のどちらがよいのでしょうか?
それぞれメリット・デメリットを見ていきたいとおもいます。
「組み立て済みの3Dプリンタを購入する」場合のメリットとデメリット
組立済みの3Dプリンタを購入する場合の主なメリットとデメリットをあげてみます。
メリット
– 導入するための難易度が低い
– 買ってきて梱包を解けばすぐに使える
– 組み立てる手間がない
– 組み立てキットでは難しいしっかりしたフレームのものがある(精度に影響する)
– キットに比べると箱型でスッキリしたデザインのものが多い
– デュアルヘッドの製品がある
– 高価格帯のものは精度の良いものが多い
デメリット
– 価格がキットに比べて割高
– 組立済みだからといって全ての商品がキットより精度が良いというわけではない
– 利用できるフィラメントに制限がある製品もある
– 改造が難しい
– 修理が難しく、コスト高
– 価格が中くらいのクラスのものだと精度の良いキットに負ける製品も多い印象
<組み立て済みで販売されているScoovo X4>
3Dプリンタを手に入れるのには、手っ取り早く、最も簡単な方法です。
なんといっても梱包をとけば使えるので、楽に3Dプリントを始めたい方にオススメです。
また高価格帯では精度の良いものが多く、デュアルヘッドで2つのフィラメントを使った出力も可能な製品があります。
キットではデュアルヘッドのものはあまり出回っていないので、必要であれば組み立て済みのデュアルヘッドのものを購入するほうが良いと思います。
あくまで筆者の印象ですが、中くらいまでクラスだとちゃんと調整された組み立てキットとほぼかわらない精度のものも多いように感じます。
一方で、キットに比べて様々な制限があるのは気をつけておきたいところです。
製品によってはそのメーカーが販売している専用のフィラメントしか使えないモデルがあります。自由にフィラメントが使えず、ランニングコストも割高になる場合があります。
3Dプリンタは駆動部分も多く、ノズルまわりの詰まりや消耗も製品によっては結構ありますが、故障するとキットに比べて修理が難しく、メーカーに出すしか対処できない場面に陥ることもあり、コストが高くなることも注意が必要です。
「組み立てキットを購入して自分で組み立てる」場合のメリットとデメリット
3Dプリンタの組み立てキットを購入して自分で組み立てる場合はどうでしょうか?
主なメリットとデメリットをあげてみます。
メリット
– 組み立て済みのものを買うより安くなる場合が多い
– 比較的修理しやすく、安価
– 改造が比較的容易
– フィラメントの選択が自由
– 3Dプリンタの機構など理解を深められる
– オープンソースなソフトウェアを利用して制御することができる
– 調整の腕次第で精度を上げられる
– 電子工作にも興味が出てくる
– 自分で組み立てるから愛着がわく
– 組み立てたものが動くことでの感動を得られる
デメリット
– 組み立てに手間がかかる
– 組み立てが終わらないと使えないので時間がかかる
– 学習コストが高い
– 精度を上げるための調整に手間をかける必要がある
– 精度がどこまで出るかは調整の腕次第
– 海外のサイトで買う場合が多くリスクや手間がある
– 電子工作の知識がある程度必要な場合がある
手間はかかるものの、かける手間と腕次第で精度の良いものが安価に入手でき、3Dプリンタの機構への理解を深めることができるのが自作の良い所だと思います。
かなり手間がかかるので、手っ取り早く造形だけをしたいという場合には、おすすめできません。
価格面では、キットだと1kgのフィラメントがついたものをAliExpressという海外のサイトの場合2万円代前半で売られており、組み立て済みのものよりかなり安価です。
3Dプリンタの自作について勉強していくと、3Dプリンタは実はArduinoというオープンソースで開発されている汎用的な制御基板を使っていることに気づきます。
Arduinoは電子工作などで多く使われている一般的な基板なので、故障してもAmazonなどですぐに代わりのものを用意することができます。他の部品についても一般的なものばかりなので、修理・交換のときの入手が楽でコストも低くなります。
組み立てる作業を通して仕組みに感心が高まります。私の場合は電子工作に興味が湧いて、今までそれほど電子工作をやっていなかったのに、ステッピングモーターをArduinoで動かせるようになりました。また、CNCなど別の機械を自作するような場合にも、この3Dプリンタの制御の仕方は参考になります。
このように、3Dプリンタの自作を通して別のところへの興味も湧いてきたりします。
組み立てキットは組み立て済みに比べると精度が悪いという印象をもたれるかもしれませんが、ちゃんと作ってしっかり調整すれば実用十分な精度になります。なにより、組み立てたものが動く光景は代えがたい感動があります。
しかし、海外のサイトから購入することが多いのでリスクもあり、学習コストが高く、利用できるまで時間と手間がかかるのも事実です。
<AliExpressで購入した3Dプリンタキット>
自分にあったものを選択しよう
それぞれにメリット・デメリットがあり、自分に合う方を選びましょう。
ざっくりいうと、3Dプリンタにかけられる資金にある程度余裕があって楽に3Dプリンタを始めたい人は、組み立て済みを購入するのが良いと思います。
手間がかかっても良いから3Dプリンタを深く知りたいとか、安価に手に入れたい人は組み立てキットを購入するのが良いと思います。
私としては、やはりキットから自作するのがオススメです。
手間はかかりますが、必要十分な精度がでて、知識が深まり安価で、改造も修理も比較的容易で、組み立てたものが動く感動があります。
次回は、安価に手に入れるため海外から組み立てキットを購入する際の注意点をお伝えしたいと思います。
藤井 光晃
PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。