3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-
海外製キットは危険がいっぱい……商品が届いたらまず検品!
みなさんこんにちは。PE-BANKプロエンジニアの藤井光晃です。
前回は海外製の3Dプリンタ組み立てキットを購入する方法についてお伝えしました。
今回は「海外製キットは危険がいっぱい……商品が届いたらまず検品!」ということでお送りします。
海外製の製品は日本の製品とは違いざっくりしているところが多々あり、上手に対応する必要があります。
失敗しないためにキットが届いたらまずどう対応するべきかお伝えしたいと思います。
商品がとどいたら必ず検品! 交換・再送・返金可能な期間内に
商品が届いたらまずは検品をしましょう。
日本で商品を購入した場合、あまり検品しない方も多いのではないでしょうか?
「まぁ大丈夫だろう……」そう思えるクオリティのものがほとんどであるためだと思います。
しかし、海外製のキットは日本のクオリティと一緒ではないので注意する必要があります。
たとえば、入っているべきものが入っていなかったり、入っているものが間違えていたり、故障していたり、といったことが頻繁にあります。
こういったことがあると当然3Dプリンタはうまく組み立てることができません。
図 1: 購入したPrusa i3のキット
このような海外製の品質でうまく組み立てるにはどうしたらいいでしょうか?
まずはキットが届いたら検品をしっかりすることです。
検品により問題を早く発見できれば、販売者に連絡をとり対応してもらうことができます。
たとえば、
– 故障している部品の代替品や足りないものを再送してもらう
– 一部返金してもらって自分で別途購入する
のような対応をしてもらえます。ただし、対応してもらえる期間は購入先により異なるので注意しましょう。
この期間を過ぎると問題があっても対応してくれませんので、基本的に泣き寝入りするしかありません。
期間は購入先によって異なりますが、AliExpressで3Dプリンタを購入した場合は20日前後が多いようです。
問題点はこの保証期間内に必ず洗い出して、対応してもらえるようにしましょう。
検品に必要なパッケージリストがない場合が多い
検品といえば、日本の製品では取扱説明書などと一緒にパッケージリストがあったりして、商品に何が入っているのか分かります。
通常はこれを見ながら、キットの部品を確認していけばいいはずです。
しかし、海外製キットはこのパッケージリストがついていない場合がほとんどです。
「じゃあ何をもとに検品すればいいんだ!?」となってしまいますが、仕方がないので、別の方法で対応します。
実際に組み立てるマニュアルを読んで、組み立てのシュミレーションをしてみることで検品します。
マニュアルを確認して、組み立ての各ステップで必要な部品を順番に除けていき、組み上がる最後までの部品が全てあるか確認できれば検品完了です。
しかし、検品のためのリストつけておいてほしいですね。
海外製キットをリリースしている国の方からすると「お安いし、説明書みたら分かるから細かいことは気にしないでいいじゃないか」と考えているのかもしれません。
国が違えば常識が異なるので、そこは合わせていく必要がありますね。国際化社会をなんだか身近に感じられます。
出来る限り保証してもらえる期間内に組み立てる
検品をするだけでは、問題に気付けない場合が結構あります。
そのため対応してもらえる期間内に、検品だけでなく組み立てまで済ませるのがベストです。
検品だけでは気付かなかった問題が、組み立て時に分かることもあるからです。
なぜ検品に失敗するのでしょうか?
まず、「マニュアル自体が不正確」であることが原因で漏れが発生します。
たとえばマニュアルに書かれているネジの種類・長さが間違えているなどです。
また、ネジ類は点数が多く、細かい部品なので、検品に労力がかかり、チェック漏れ起こりやすいのも一因です。
商品によっては「適当にいれているんじゃないか?」と思うくらい、完成時にすごい量のネジが余ったり、一部まったく足りなかったりすることがよくあります。
筆者はKosselというデルタ型3Dプリンタを組み立てたときに、キャップボルトが入っていないといけないのにトラスボルトが入っていて、ヘッド部分のサイズが大きいため穴に入らず止められなかったことがありました。
これも検品チェックで漏れてしまい、組み立て時点で気付きました。
図 2: ボルトの間違いで穴に入らず止められないキャリッジ
幸い期間中でしたので、販売者に連絡し一部返金を受け、別途キャップボルトをホームセンターで購入し事無きを得ましたが……。
今まで結構な頻度でこういうことがあったので、やはり組み立てまで期間内に終わらせるのは、保証を受けるためには重要ですね。
AliExpressでの保証とその受け方
保証期間内の検品・組み立て中に問題が発生した場合には、販売者に連絡を取る必要がありますが、連絡のとり方は購入するサイトにより様々です。
一つの例として、多くのメイカーズの方が利用されているAliExpressを例に解説します。
– AliExpress
– http://ja.aliexpress.com/
たとえばAliExpressの場合は「Buyer Protection」という保証システムが用意されています。
これは信頼性の低い販売者が多い中国で安心してネットで買い物ができるようにするためにタオバオグループが開発したシステムです。
図 3: Buyer Protectionの流れ
このシステムでは商品を購入した時点でAliExpressを運営しているタオバオが一旦商品代金を預かります。
販売者が商品を発送し、商品が到着して問題ないことを確認した後、購入者がサイトのフォームで確認処理を行います。
こうして確認処理で問題がなければ代金が販売者に支払われます。確認処理を購入者が怠った場合は、保証期間が完了すると販売者にお金が支払われることになります。
一方、もし問題があった場合は、購入者に全額・または一部返金処理されます。
つまり、問題がないと購入者が確認するか、保証期間が終了するまで販売者に代金は支払われませんので、比較的安全に買い物ができるようになっています。
保証期間は「販売者保証」という名前で表示されています。図の商品の場合は購入から23日間です。
図 4: AliExpressの保証期間が表示されている箇所
問題があった場合、異議申し立てするための専用フォームから連絡します。
商品が保証期間内で確認処理していなければ場合は、「Open Dispute」ボタンを押して質問に答えていく形で異議申し立てを行います。
しかし、英語で販売者とやりとりする必要があります……やっぱり国際化社会では英語は大切ですね (汗)。
特に慎重に行う必要があるのは、「問題がなかった」ことを伝える確認処理です。
これも、注文した商品のページの「Confirm」ボタンを押してフォームに答えていくだけです。
当然ながら、これを行うと保証期間内であっても、問題がなかったという扱いになり保証期間が終了します。後から「やっぱり問題があった」とわかっても保証を受けることができません。
ですので、問題がなかったと確認する処理は極力完成してからにして、保証をしっかり受けられるようにしておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。失敗しないためにどう対応するべきか勘所をお伝えしました。
海外製のキットの「ざっくり」に対応するために、検品・組み立てを保証期間に終わらせることが重要です。そして、問題があれば販売者に連絡をとり、対応してもらいましょう。
初めは日本の商品を購入する場合との違いに戸惑うこともありますが、慣れてうまく対応できるようになれば問題に感じなくなります。
次回は、3Dキットの組み立てについて解説していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!
藤井 光晃
PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。