3Dプリンタは作れる! -オープンソース3Dプリンタのススメ-
購入例に学ぶ3Dプリンタキットの選び方
みなさんこんにちは。PE-BANKプロエンジニアの藤井光晃です。
最近、3Dプリンタでスマホや哺乳瓶などを固定できるアームが作れるジョイントを作りました。 30×40材・M6のボルト・ナットとこのジョイントを使って組み立てれば、スマホなどを好きな角度で固定できます。
・Thingiverse
https://www.thingiverse.com/thing:2470154
・GitHub
https://github.com/silvershell/printed-wood-arm-joints
Thingiverseで公開されているスマホアーム用ジョイントを組み立てたもの
CADと3Dプリンタがうまく使えたら、自分が「こんなのあったらいいのにな」と思ったものを、形にできることが多くなります。
そしてThingiverseやGitHubで共有することで、ネットを通じて誰かの役にも立てるかもしれません。
このようなものづくりで世界が広がっていく感じは、3Dプリンタのよいところですね!
前回は、思い切って最初の一つを購入してみることの大切さと、うまく購入するために最低限考慮すべきことをお伝えしました。
今回は、3Dプリンタキットの購入例をあげて解説してみようと思います。 選んだ理由も解説しますので、購入の際の参考になれば幸いです。
最近また3Dプリンタキットを購入しました!
最近気になっていた3DプリンタキットがAliExpressにあったので購入してみました。
それがこちらです。
最近購入した3Dプリンタキットを組み立てたもの
こうやって私の部屋に、どんどん手持ちの3Dプリンタが増えていきます…。
3Dプリンタを使う人は、一台購入して暫く使うと、さらにもう一台ほしくなり購入する人が多いようです。
私もそんな感じになってしまっていますが、なかなか場所を取るのである程度にしたいところです(汗)。
このキットを選んだ理由はいろいろあります。
汎用的な部品が多い!
このキットを選んだ理由の一つに、汎用的な部品が多く使われていることがあります。
汎用的な部品が使われていることで、故障時の交換部品の入手が容易で安価になります。
例えば下記のような部品が使われています。
・フレームが2020アルミフレーム
・ホットエンドがE3D
・メインボードはMKS(ファームウェア「Marlin」対応)
・Z軸は8mmの台形ねじ
・モーターはNEMA17
・ロッドはよく使われている8mm
・リニアベアリングがLM8UU
・LCDがRepRapDiscount Smart Controller
・ヒートベッドはMK2B
・電源は12V200Wの安定化電源
など…
汎用的でない部品を使っているため故障した時に交換しづらいのは、3Dプリンタで作られたパーツ部分くらいではないかと思います。 他は手に入れやすい汎用的な部品ばかりです。
特にメンテナンス頻度が高く手がかかるホットエンドが、汎用的なE3Dであることはメリットが大きいです。
3Dプリンタを使っていると、この部分はノズルや中のテフロンチューブが痛み交換が必要になりますが、この部分の交換部品が入手しやすく安価です。
LCD・メインボードについてもPrusa i3でよく使われるもので、ファームウェアの改造も問題なさそうです。
フレームに汎用的な2020アルミフレームを利用した3Dプリンタ!
人気のあるPrusa i3モデルの3Dプリンタキットは、アクリルをCNCで切り出したフレームのものが多いですが、破損すると同じものを入手するのは困難です。
アクリルフレームの剛性については、据え置きの3Dプリンタとして利用するには必要十分ではありますが、やや弱い構造材です。例えば、展示会などに持っていく際に移動する場合などでは、道中に普段かからない力がかかると容易に破損してしまいます。
アクリルのフレームを採用したPrusa i3
そういった問題をいろいろ解決してくれそうなのが、今回購入したキットで採用されている2020アルミフレームを使ったフレームです。
2020アルミフレームは他の工作機械のフレームにも利用される汎用的な構造用の部品です。
日本では残念ながらホームセンターでの入手は難しいですが、ミスミさんやモノタロウさんで普通に様々な長さのものを入手することができます。
2020アルミフレーム
アルミもフレームなので剛性がかなりあり、断面がXのような形になっていて、この溝の部分に固定具を入れてネジ止めなどの固定に使うことができます。
いろいろなものを固定するための金属部品も汎用的なものが販売されており、様々な改良に必要なものを取り付けることができるので、改良もしやすいです。
そして、フレーム自体を作るのに通常必要なCNCで切削や木工を行う必要がなく、汎用的なジョイント部品を使って組み立てるだけです。
メンテナンスしやすいE3D + Bowden Extruder
この3Dプリンタは、フィラメントを押し出すエクストルーダーがフレーム側についていて、テフロンチューブというチューブを通してフィラメントをヘッドのホットエンドに送り出すタイプになっています。
この方式のエクストルーダーはBowden Extruderとも呼ばれます。
テフロンチューブでエクストルーダーとホットエンドがつながっている
フレームに固定されているエクストルーダー
一方、よくあるPrusa i3タイプのキットでは、フィラメントを押し出すためのモーターがヘッド部分についているタイプが主流で、モーターの直下のホットエンドに直接フィラメントを送り込みます。これをDirect Extruderと呼びます。
Direct Extruderのほうが精度が高くフィラメントの交換も簡単です。 しかし、Direct Extruderを採用する3Dプリンタキットの多くは独自のエクストルーダーとホットエンドが一体となったようなものが多く、交換部品はそのメーカーのものを購入することを前提としている場合も多いです。
そして、メンテナンスのときに分解しないといけなくなる部分が多くなりがちで、メンテナンス性が低いものもあります。
今回のキットはBowden Extruderのタイプで、ホットエンドにE3Dが採用されています。
ホットエンドには汎用的なE3Dが採用されている
フィラメントの交換が若干面倒で精度が多少落ちますが、メンテナンス性が高く、最小限の分解でのメンテナンスが可能です。
モーター・ロッド・台形ねじ・リニアベアリングなど動くための機構については標準的なキット
精度に影響するモーター・ロッド・フレキシブルカップリング・台形ねじ・リニアベアリングなど動くための機構については標準的なキットです。
もし、もっと精度が欲しくなった場合でも、標準的な部品が使われているため、台形ねじ付のモーターにしたりリニアベアリングを交換したりである程度対応することができると思って購入しました。
実際に使ってみると、キットの構成のままで十分使える精度だったので、現状そのまま使っています。
しかし、残念なところも…
このキットには残念なところもありました。 私が購入した海外製のキットでは、ほとんどの場合オチがついています(汗)。
PLAのフィラメントが2ロール付いているモデルを購入したのですが、これが実際到着するとPLAではなくABSでした。 リールのシールには確かにPLAと書かれているのですが…
実際に使ってみるとPLAの温度では溶けず、匂いもありやっぱりABSのようでした。
なのでABSとして使うと問題ないので、ABSだと思って使うことにしました。
PLAと書かれているのに何故かABSだった
また、カタログでは8GBのSDカードが付いていると書かれていたのですが、実際にとどいたものは2GBのもので、しかも何故か年季が入っているような汚れがありました。
新品のはずなのに汚れている付属のSDカード
さらに、ケーブルを束ねるためのスパイラルチューブも短かったので、写真のように束ねることができませんでした。
なかなかいろいろありますが、毎度のことなので私はもう慣れてしまいました(笑)。
慣れると「今回はこの手できたか」と状況を楽しむようにすらなってきますね…。
以前にもお伝えしましたが、こういった商品に問題があった場合に、返金を受けるシステムがAliExpressにはあります。これを使ってショップに状況を説明したところ、その分返金対応してくれました。
今回の買い物では商品説明と違う部分がいろいろありましたが、使うには問題ない違いで、その分の一部返金も受けたので問題ありません。思った以上に返金してもらったので、むしろ良い買い物になったと思います。
まとめ
現状自分がほしいと思って購入した3Dプリンタキットについて、購入した理由とともに特徴を解説しました。
購入する人によって、どんな3Dプリンタを良しとするかは違いますが、購入例を参考にすることで3Dプリンタを選ぶ目を養うことができると思います。
今回の購入例が参考になれば幸いです。
次回は、3Dプリンタキット選びについて、もう少し掘り下げていきたいと思います。
藤井 光晃
PE-BANKで開催されている「自作3Dプリンタ勉強会」の講師。ここ数年はiOS/Androidのアプリ開発と講師をメインに活動しているフリーのソフトウェアエンジニア。技術に関しては雑食系で、過去には銀行向けの業務系システムや、DVD/カメラ向けファームを書いていたり、動画コーデックの研究開発とかもやっていた。動画情報サイトLaccel も運営している。10年くらいLinuxがメインOS。