I->Read(Books); 〜とあるフリーランスIT技術者の本棚〜
夏だ! ビールだ! 真夏の一冊 ~「ビールの教科書」
暑い季節がやってきました。ビールがおいしい季節です。
これはビールに限ったことではりませんが、アルコールが体内で分解されるときには水が使われるので、喉が渇いたときにキュッと飲み干すのは正しい飲み方とはいえません。
しかしながら日本の暑さには、冷えた喉越しよい飲みものがマッチすると思いますし、そうした飲み物のひとつがビールだと思っています。
「暑いときの飲み物」としてのビールが日本で確立されるうえで、醸造メーカー各社がたいへんな苦労をされたことは想像に難くありません。
今回とりあげるのは、ビールにまつわる一冊なのですが、そのあたりのことも書かれています。
この一冊を読めば、ビールがよりいっそうおいしく飲めるようになるのではないでしょうか。
夏と言えば…ビールがよりいっそう美味しくなる一冊!?
この本には、ビールの歴史から作り方、果てはビールの鑑定や、日本のビール事情について記されています。
これらがすべて、ビール消費者としての日本人の感覚に即した形でまとめてられており、理解しやすいです。
筆者はこの本を読んで、海外産ビールの名称が、その生産地や原材料や製造法に深く関わっていることを知りました。
ビールの名称と背景を知って世界のビールを出してくれるお店にいくと、これまでは「こんな感じの味ですよ」とメニューに記された説明文に頼らざるをえなかった注文が、ひと味もふた味も違ったものになります。
たとえば、筆者の好きなヴァイツェン。南ドイツのバイエルン地方で作られており、ビールの基本では二条大麦の麦芽を多めに使うところを全体の50~70%程度を小麦麦芽にして製造されます。
日本では、「白ビール」という呼び方もされています。あっさりかつ甘めなので飲みやすく、どれを飲もうか迷っている人にも「こういう作り方のビールでね。甘くて飲みやすいのだよ」と自分の言葉で勧められます。
勧めを受けた方も、どのようなものかイメージするためのヒントが増えるため、喜んでもらえることが多いです。
読書会での「意外なつながり」
この本については、とても思い出深いエピソードがあります。
筆者のプロフィールをみていただくと分かりますが、名古屋で「伏見なんでも読書会」を開催しております。
このあとの話にも関係しますので、ここで読書会の流れについて簡単に説明します。
ひとくちに読書会といっても、そのスタイルはさまざまです。
参加者がそれぞれ異なる本を持ち寄って、同じ場所でそれぞれが読みふけるものもあれば、みんなが同じ本を読んで集まり、その感想を話し合うものもあります。
「伏見なんでも読書会」の進行は、次のとおりです。
1.参加者はひとり一冊あたり15分ほどの時間をつかって、本を読んで得た知識や気づき、感想などを発表します。
2.発表後に、参加者でディスカッションします。
読書会の参加者は、必ず発表しなければならないというわけではありません。
発表を聞いてディスカッションで意見するというスタイルでも参加できますし、そのようなスタイルで参加される方が、発表する方より多いです。
発表の順番は、読書会のさいしょに、司会(筆者)が発表を希望する各人と調整して決めます。
発表者ひとりずつに対して、上述の1と2が1セットで繰り返されます。
このとき、ある本でのディスカッションの内容が、まったく関係のなさそうな別の本のディスカッションとつながるということがしばしば起きます。
こうした「意外なつながり」が、参加者ひとりひとりにとっての「良いお土産」になっているようです。
このあたりのことについては、読者の皆様に興味をもっていただけそうな話題が多いですので、今後このコラムでも折を見て触れていくことにします。
発表者が発表にあたって選ぶ本ですが、原則としてとくに「こういう本で」という制約はつけておりません。
しかし、たまにではありますが、紹介する本を特定のテーマに沿ったものに制限するときがあります。
かれこれ数年前になるでしょうか。そうしたテーマのひとつとして「酒」をとりあげ、すべての発表者に酒にまつわる本を取り上げるようにお願いしたことがありました。
そのときに、今回紹介した本を取り上げた参加者がいらっしゃったのですが、お話しいただいた内容がいまでも深く印象に残っています。
読んで、飲んで、考える。
お話いただいたことは、次のような内容でした。
日本で一般的に飲まれているビールは、ピルスナーという種類のビールです。
それもピルスナーを日本人好みに独自に進化させて作り上げた、ビール全体の系統図からすると極めて末端の小さな部分を占めるビールです。
日本の大手酒造メーカーは、このピルスナーに対して、あの手この手で変化をつけつつ、消費者に提供しています。
それにもかかわらず、ビールを飲む日本人の多くが「自分が好きな銘柄を自由に選んで飲んでいる」と認識しているのではないでしょうか。
しかしながらビールの系統図から見ると、そうして得られた自由など極めて狭く小さく作られた選択肢から選び取られたものであり、その選択もマーケティングという誘導の名のもとにもたらされたものではないのか。
そこから「われわれがよく口にする”自由”とは、果たして何なのだろうか」という結論で発表が終わりました。
まさか、ビールにまつわる本から「自由とは何か」という話に至るとは思いもよりませんでした。
筆者はビールを飲むたびに、このエピソードが頭をついて出てきます。
みなさんも、これからの時期、ビールを飲みながら「自由っていったいなんだろう」と考えてみてください。
酔いもあいまって、意外な答えが見つかるかもしれませんよ。
平岩 明憲
フリーランスのIT技術者です。業務系システム開発をメインにしています。有限責任事業組合アプライトネスのメンバーです。とあることがきっかけで「IT技術者が、さまざまなことについて、いろいろな人と話し会える場が必要だと」と思い立ち、読書会を立案。2012年に「伏見なんでも読書会」をはじめました。