【IT×スポーツ】 第2弾 「プロ野球界におけるIT活用の現在と未来」イベント開催レポート
2017年6月28日、東京都中央区銀座の「CHAIRS」にて、「ANKET(アンケット)」イベント【IT×スポーツ】 #プロ野球界におけるIT活用の現在と未来」が開催されました。
現在のスポーツ界では、チームや選手の強化やコンデイション管理、あるいはファンや観客を楽しませるために、さまざまな場面でITが利活用され、大きな注目を集めています。
2016年10月に第1弾として開催された【IT×スポーツ】では、サッカーをテーマとして取り上げ、Jリーグを中心とするサッカー界で今どのようにITが活用されているのか紹介。ご参加いただいた方に、たいへんご好評をいただきました。
そこで今回は、シーズン真っ只中で盛り上がるプロ野球をテーマとして【IT×スポーツ】第2弾を開催。プロ野球の世界で、どのようにデータやシステムが活用されているのか、様々なスポーツのデータを扱うデータスタジアム株式会社のベースボール事業部プロデューサー、須山 晃次(すやま こうじ)氏を講師にお招きし、お話をうかがいました。
自ら投手として活躍し、早稲田大学卒業後はローソン野球部に所属。その後、渡米し大学院でスポーツマネジメントを専攻し、米国マイナーリーグでインターンなども経験してきた須山氏。データ活用やシステム運用などのIT分野だけでなく、日米の野球界に対する深い経験と知見を持つ須山氏ならではの視点で、プロ野球チームの現場におけるデータ利活用とその未来について語っていただきました。もちろん、会場は満席です!!
プロ野球球団を支える今のITサービスとは
須山氏のセミナーは、プロ野球球団向けのサービスの現状からスタート。試合中に取得されたデータが、どのように活用されているか解説していただきました。
お話を聞いていて感じたことは、プロ野球におけるIT利活用は、球団の強化のためだけではないということ。メディアに提供するデータやファンのためのコンテンツなど、想像以上に幅広く活用されていることがわかりました。
あわせて、プロ野球球団にデータやシステムを提供するビジネスがどのように進化してきたか、歴史についても教えていただきました。普段、なにげなく観ているテレビやネットのコンテンツの裏側で、どのようなシステムが構築されデータが活用されているのか理解することができました。エンターテインメントの要素も含んだプロスポーツならではの特徴といえるでし_ょう。
さらに、多くの球団が利用するデータスタジアム社のプロダクトについて、トラッキングなどのデータ収集システムやチームに提供するソリューションなど具体的な内容を解説していただきました。プロ野球だけでなくサッカー、バスケットボール、ゴルフなど他の競技のプロダクトと比較しながら解説していただくことで、それぞれの競技に求められるデータ活用やシステムは大きく異なり、それだけに、ひとつのスポーツに特化したサービスを提供することが決して容易ではないことが理解できました。
ITと情報でもっと野球が変えられる
セミナー後半では、データスタジアムとしての今後の戦略や施策について、お話をうかがいました。
ビジネス的な視点でみると、最近は球団自らがシステムを開発したり、競合他社が参入したりと、競争が激化。そのなかで優位性を保つには、プロ野球におけるIT利活用の抜本的な再定義や再構築を進めなくてはならないと須山氏。
須山氏は、近年の傾向として「分散されていた各システムをひとつのシステムに統合する」「より多様な映像利用に応える」「トラッキングデータやセイバーメトリクスのより効果的な活用方法を模索する」といった流れがあるといいます。
そのため今後は、既存のシステムに依存することなく、データや映像のワンソース・マルチユース化を進め、そのうえで球団に必要な情報を一元管理できる情報管理システムの構築が進むと須山氏。この情報管理システムでは成績、メディカル、査定などの球団の選手情報はもちろん、スカウト対象選手まで一元管理が可能になるということです。
また、その一方で、選手個人が利用しやすいパーソナルツールや、ファームなどでも手軽に利用できる様々なソリューションも要望に応じて開発やカスタマイズを進めているようです。
今後の新たなサービスとしては、マルチアングルカメラシステムの開発、AIを活用した戦術・戦略のサジェスト機能、トップ選手のデータを活用したスカウティングやトレーニング・育成などが予測されています。
また、VRを活用した開発中のシステムなど、選手の強化につながるだけでなく、ファンに向けてプロ野球の新たな楽しみを広げる試みも進んでいるとのこと。ITはプロ野球球団をサポートするだけでなく、ファンに向けて新たな楽しみをプラスするという大きな可能性を備えていることがわかりました。
「ITと情報(データと映像)でもっと野球が変えられる」と須山氏。これからも、ITの力で強い球団を共に作るパートナーを目指していくと、セミナーの最後を結んでいただきました。
セミナー後の質疑応答でも、参加者から須山氏に多くの質問が寄せられました。その中でも印象的だったのは「今後、プロ野球のIT開発においては、どのような人材が求められるのか?」という質問でした。
須山氏の回答は「エンジニアとしてのスキルはもちろんですが、プレーやルールなど野球そのものに対する詳しい知識があったほうが、よりスムーズな開発が可能になる」というものでした。スポーツという、ある意味特殊な分野におけるIT開発のポイントとも言えるのではないでしょうか。
また、懇親会では須山氏を囲んでの野球談義が盛り上がり、投球フォームなども交えて熱く語る一場面も。IT×スポーツの世界に対する、参加者の皆様の関心の深さがうかがえるイベントとなりました。
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