自営業者(個人事業主)の仕事が奪われている!
一人請負の問題
ある労働局が、請負の適正化を図るために自らのホームページで“偽装請負の代表的なパターン”の一つとして、「一人請負型」を提示し、「実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋します。ところが、Bは、その労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです」と説明している。このことは、「Bは、その労働者と労働契約は結ばず、労働者をあたかも個人事業主のごとく扱い(個人事業主として独立しておらず、労働者であるのに)請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせる」ことを云っているのです。また、適正でない「一人請負」のケースとしては、会社が請負契約をして、それを実施するために自社の雇用する従業員を発注者の企業に配置し、現場に管理者を置かず作業労働者だけで、それを遂行する場合などに偽装請負状態が生じやすいとの指摘があります。それは、通常、会社による請負の場合は、会社としてその業務を完成遂行するためには現場では一人または複数の作業労働者とは別に、その現場の管理者がいて自社の責任で指揮命令して業務を処理・完成することが必要だからです。現場に管理者がいない場合は発注者の担当者等から直接労働者が指示を受けざるを得ないことも起こります。それは、結局直接発注者からの指揮命令を受けることとなり、「告示第37号」の「派遣と請負の区分基準」に違反することになると云っております。
しかし、独立した自営業者(個人事業主)が、一人で請負作業を行うことは法律上、何の問題もありません。 自営業者(個人事業主)は、個人が事業主(管理者)であり、労働者ではありませんので、発注者と直接注文内容や請負業務の処理について協議し、注文指示に対応することは全く問題ありません。
自営業者(個人事業主)として請負・受託業務を独立して処理している人について、その契約と実態に反して一様に「労働者」とみなし、労働者派遣法や職安法が適用されるということはありません。また、個人事業主に対して個人請負や個人委託を認めないということは、独立自営業者である個人事業主の営業の自由を認めないことであります。これを行政が認めないことは憲法に違反し、個人の職業選択の権利を侵害するものですからそのようなことはありません。
また、発注者である企業がそのような理由で自営業者(個人事業主)に業務を発注しないことも不当とされます。
えせ個人事業主の問題
自営業者(個人事業主)とは言っても、事業主としてのしっかりとした自覚がなく、また事業上の独立性を有しない方が、契約時は自営業者(個人事業主)として契約を交わし、何かあった時は労働者であると身勝手な主張をする者がいます。例えば、個人事業主として業務を受注しながら個人請負契約の解約は解雇であるから無効であるとか、労働者であるからサービス残業の手当を支払えというようなことを後になって主張する者は「えせ個人事業主」であると云えます。もちろん、労働者派遣法の労働者保護の観点から労働者を、その法律によって守ることに異論を申し上げるものではありません。しかしながら、正式に自営業者(個人事業主)として独立した方々が、適法、適正に自己の責任において事業を行うことも尊重されなければいけません。自営業者(個人事業主)としての“個人”と、雇われている労働者としての“個人”とは、その法的な立場がまったく違うものであります。正式な個人事業主とは
「えせ個人事業主」の反対の「正式な個人事業主」とは、自己の責任において独立して事業を行うものであります。適正な独立自営業者としての業務の遂行を行うことが、いかなる理由があろうとも、それが法令に反しない限り(公共の秩序福祉に反しない限り)妨げられてはいけません。そこで「正式な個人事業主」とは、本コンテンツにある「安西弁護士が提案する“情報サービス業に於ける自営業者(個人事業主)の請負の適正化のための自主点検表”」にも明示されている、下記の点を満たす者を云います。
正式な個人事業主
- ・個人事業の開業届けを出していること。
- ・税金は青色確定申告にて納税していること。
- ・自己の契約については、全ての契約条件を確認し自らの判断と責任において行っていること。
- ・自身は自営業者(個人事業主)であり誰にも雇われているものではないことを自ら認識して自覚をもって独立して仕事をしていること。