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ビッグデータの活用が企業にとって必須となっている昨今、データベースを専門に扱うデータベースエンジニアの需要も急増しています。ただ、「データベース」という言葉は何となく聞いたことがあるものの、データベースエンジニアが具体的にはどのような仕事をしているのかイメージしづらい方も多いと思います。
そこで当ガイドでは、データベースエンジニアの仕事内容や未経験からデータベースエンジニアを目指す方法、必要なスキルや資格などについて解説します。年収や上位職種なども紹介しますので、データベースエンジニアを目指している方は参考にしてみてください。
データベースエンジニアの仕事内容
まずはデータベースエンジニアの基本的な仕事内容について解説します。
データベースの設計・開発
データベースエンジニアは顧客のニーズに合わせてデータベースの設計や開発を行ないます。
データベースとは、データを入れておく大きな箱のようなものです。システムが稼働するときには、この箱から必要なデータを取り出したり、計算した結果でデータを更新したり、不要なデータを削除したりといったことが行なわれます。効率的にデータを出し入れするためには、必要な単位に箱が分けられており、同じデータがあちこちに散乱していることがないようにするなど、きれいな状態に整理整頓されていることが必要です。
データベースエンジニアは、システムにとって最適なデータベースの形を設計し、MySQLなどのデータベース製品を使って実際にデータベースを構築していく役割を担います。
一般的なシステムエンジニアも、業務的な観点からのデータベース設計や開発を行ないますが、データベースエンジニアは技術面においてより専門的な知識を有し、開発をサポートします。例えば、処理速度やデータベース容量など、さまざまな観点で効率的なデータベースを作り上げることが期待されます。
データベースの管理・テスト
データベースの設計・開発を行なったあとは、データベースが顧客の要求を満たしているか、正常に動くかなどをテスト・管理します。具体的には、実際にプログラムなどから読み取り・更新・削除などをさせ、想定した動きになるかといったテストを行ないます。データの見積もり最大件数を想定どおり格納できるか、などのテストを担当することも。
また状況に応じてデータベースサーバーの最適化や効率化も行ないます。データベースを保持する場所には限界があり、無制限に容量を増やすとコストが莫大になるため、資源の無駄を防ぐための施策を講じるのもデータベースエンジニアの役目です。例えば、いくつかあるデータベースサーバーのうち、どのサーバーにどの箱を格納するかを検討し直すなどして、データをより長期的・効率的に保持できるようにします。
さらに、データへの不正アクセスやデータ流出を防ぐ施策など、セキュリティ面での対策も担当します。
データベースの運用保守
データベースが実際に利用開始されたあとの運用保守も、データベースエンジニアの仕事の一つです。例えば、システム稼働中の定期的なデータバックアップや、アクセス権の管理などを担当します。
また、データベースに何らかのトラブルがあった際の対応や、顧客から出るアップデートの要望への対応もデータベースエンジニアの役割です。
データベースエンジニアの年収
データベースエンジニアの平均年収は547万円となっています。また、派遣社員の平均時給は2,655円です(いずれも求人ボックス調べ)。
フリーランスで活動するデータベースエンジニアの場合、案件の平均単価は50~120万円ほどと幅が広くなっています(PE-BANK内の案件データ参照)。
案件によって規模や難易度もさまざまであるため、スキルが高いエンジニアほど高単価の案件を獲得しており、年収にも幅が出ているといえます。
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データベースエンジニアに必要なスキル・知識
次に、データベースエンジニアに必要なスキルや知識について解説します。データベースエンジニアはその道のスペシャリストであるため、単にデータベースを扱えるだけでは能力として不十分です。エンジニアとしての必須能力にデータベースの専門知識を加え、さらにより高度な視点を持ったエンジニアこそが、クライアントからも頼られる人材であるといえるでしょう。
SQLに関する知識・コーディングスキル
データベース操作言語であるSQLは、データベースを扱うために必須となるスキルです。データベースエンジニアは、データベースを構築する際にSQLを使用するほか、プログラムが発行するSQL構文を最適な形でコーディングする技術などが要求されます。
同じ処理結果となるSQL構文でもいろいろな書き方ができ、単に業務的な仕様を満たしているだけでは、良いコーディングとはいえません。より無駄がなくシンプルで処理速度の速い構文にできるかどうかが、データベース専門家としての腕の見せ所となります。
また、データベースと一口にいっても「Oracle」「MySQL」「Microsoft SQL Server」など各種製品が存在し、それぞれアーキテクチャは異なります。さらにそれらデータベースを扱うアプリケーションもさまざまです。データベースエンジニアはデータベースのスペシャリストとして、世界中に各種あるデータベース製品やアプリケーションについて精通していることが求められます。
コミュニケーションスキル
データベースエンジニアに限りませんが、エンジニアにとってコミュニケーションスキルは必須能力の一つです。
まず、データベース構築にはクライアントとのやり取りが欠かせません。データベースという専門性の高い分野を扱いつつ、クライアントにも理解しやすい形で対話を重ねていく能力が求められます。
またクライアントの意向を汲み取りつつ、開発部門など他部署とも連携しながらデータベースを作ることになります。チームメンバーとの円滑なコミュニケーションなしに、プロジェクトの成功はありえないといえるでしょう。
企業のビジネス戦略を見渡せる俯瞰スキル
データベースはただ利用できればいいだけでなく、企業のビジネス戦略にとって非常に重要な要素となっています。データの分析とビジネスへの活用は、現代企業の成長戦略にとって欠かせません。
顧客の経営戦略全体を見渡し、データをどのように活かせるかを踏まえてデータベース構築できるデータベースエンジニアは、より希少価値が高いといえます。こういった人材であれば、社内外問わず重宝されるでしょう。
データベースエンジニアにおすすめの資格一覧
データベースエンジニアとして働くために必須の資格というのはありません。しかし、高度なスキルを証明できる関連資格はいくつかあり、保持していることでわかりやすいアピールになるでしょう。ここではそういった、データベースエンジニアにおすすめの資格をいくつか紹介します。
基本・応用情報技術者試験
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、データベースエンジニアに限らず、すべてのITエンジニアにとってポピュラーであり、基礎となる情報処理資格です。独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)が実施しています。
どちらもIT技術者として必要な知識を持っていることを証明する資格で、基本情報技術者の上位資格が応用情報技術者となります。
基本情報技術者試験はITエンジニアの登竜門ともいえる資格で、合格することによって技術者として十分な基礎を持っていることを証明できます。応用情報技術者は基本情報技術者より幅広い知識を有し、さらにその知識を開発現場で応用できるスキルを持っていることの証明となります。IT関連企業にエンジニアとして入社した新入社員が最初に目指す資格としても最適で、毎年多くのITエンジニアやその候補者が受験しています。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、その名のとおりデータベースに関する知識を試される資格です。基本情報処理技術者試験などと同様に情報処理推進機構が実施しています。また、専門性を求められる高度な資格として、ネットワークスペシャリストなどとともに、応用情報処理技術者の上位資格に位置付けられています。
データベーススペシャリスト試験は、データベースに関しての企画・要件定義・開発・運用・保守を主導的立場で担当できる実力が要求され、記述式の出題もある高難易度な資格となっています。
データベーススペシャリスト試験に合格することで、膨大なデータベースを設計管理し、さらに企業経営に活用していける能力があることを証明できます。
オラクルマスター
オラクルマスターとはデータベース製品のなかでも最もメジャーなものの一つといえる「Oracle」に関する知識を試される資格です。
オラクルマスターはデータベース管理者(DBA)の資格と、データベースをあつかう言語であるSQLに関する資格に分かれており、DBAに関しては難易度によってさらにBronz・Silver・Goldなどの段階に分かれています。
特定製品に関する知識・技術に特化した資格ではありますが、Oracleは多くの企業・システムで利用されている製品です。そのため、この資格を保持していることはデータベースに関する実践的な知識・技術を保持している大きなアピールになるでしょう。
データベースエンジニアの将来性・キャリアアップ
データベースエンジニアの上位職種・キャリアアップ先の職種として、データサイエンティストがあります。データベースの構築、運用を専門とするデータベースエンジニアに対して、データサイエンティストは収集したデータを解析し、ビジネスの改善につなげていくことがおもな役割です。
似たような職種にデータの収集・分析を担うデータアナリストというものがありますが、データサイエンティストは企業の経営戦略の提案や課題解決までを行なうため、さらに難易度の高い仕事といえます。
データサイエンティストは企業の経営に関わる部分に携わるため、データベースエンジニアよりも高年収が期待できます。必要なスキルの幅も広がりますが、データベースを扱う点は基本となるため、キャリアアップ先としてイメージしやすい職種でしょう。
データサイエンティストとは?年収やおすすめの資格・必要なスキルについて徹底解説!
未経験からデータベースエンジニアになるにはどうすればよい?
データベースエンジニアになるには、いくつかのステップを踏みながら目指していくのが現実的かつおすすめです。ここでは未経験の方がデータベースエンジニアを目指す場合に、具体的にどうすれば良いかを解説します。
プログラマーやSEからステップアップする
データベースエンジニアは、ITエンジニアのなかでも専門的な知識を有する職種です。そのため、システム開発未経験からいきなりデータベースエンジニアを目指すのは、あまり現実的ではありません。
まずはプログラマーやシステムエンジニア(SE)として開発プロジェクトをこなしながら、徐々にステップアップする形で目指すのが現実的な方法といえるでしょう。基本的な開発工程の知識はデータベースエンジニアとしても必須となるため、実務のなかでこの経験を増やしていきます。
また、データベース関連の業務に積極的に参画したり、独学で学習したりすることでスキルアップが可能です。
運用・保守からステップアップする
データベースの運用・保守業務を担当しながらスキルアップし、データベースエンジニアになるケースもあります。運用・保守業務では日常的にSQLを利用する機会があり、このなかでデータベースの構造やSQL構文について学ぶことが可能です。一般的なシステムエンジニアよりもデータベースに触れる機会が多いため、現場で使える専門知識を蓄積できるメリットがあります。
その反面、運用・保守業務担当者はシステム開発工程を経験する機会がほとんどないため、基本情報技術者などの資格試験を利用して、知識やスキルをアピールできる下地を作っておくとよいでしょう。
まとめ
ビッグデータ時代において、もはやデータベースは構築・保持するだけの対象ではありません。企業にとって、ビジネス戦略や課題解決にデータを活用することが必須となっているなか、データベースエンジニアに期待される役割も大きくなっているといえます。開発に関する実践的なスキルを持つほか、クライアントの立場に立った俯瞰的な視点を持てる人材は、今後需要が高まる一方でしょう。
その分、若干敷居の高い職種ではあるため、まずはシステムエンジニアとして現場で経験を積むなどして、キャリアアップという形で目指していくのがおすすめです。