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近年、プログラミング言語の一つである「Rust」が注目を集めています。
Rustは高速かつ安全性が高く、WebアプリケーションやOS開発、組み込みシステムなど、幅広い分野での利用が期待されています。今後もますます注目度が高まることが予想され、ITエンジニアにとって押さえておきたいスキルの一つといえるでしょう。
そこでこの記事では、Rustの特徴や将来性、学習方法などについて、Rust初心者の方にもわかりやすく解説します。Rustに興味がある方や、新しい言語を学びたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Rustとは
Rustは2006年から開発がスタートした、比較的新しいプログラミング言語です。高い需要があるC言語やC++を超えるために作られた開発言語であり、次代を担うプログラミング言語として注目されています。
プログラミング技術に関するコミュニティであるStack Overflowが発表した調査(※)では、世界のおよそ9割のエンジニアが使い続けたいと思っているプログラミング言語として、Rustを選んでいます。
このことからも、今現在広く利用されているC言語やC++に代わる可能性のある言語として、期待度の高さがうかがえるでしょう。
Rustの特徴
次に、Rustの特徴について解説します。
細かい処理まで具体的に記述が可能
RustはC言語と同様に、コンパイラーやOSなどの低レイヤー部位に関する細かい記述ができ、メモリを直接管理できるシステムプログラミング言語です。
OSや組み込みソフトウェア開発においては、いまだにC言語のシェアが大きいものの、今後は細かな記述が可能なRustのシェアが高まる可能性があるでしょう。
安全性が高い
Rustでは、「所有権」と呼ばれる独自の概念を利用することによって、C言語よりも安全性の高いメモリ管理を実現しています。
他のプログラミング言語では、GC(ガベージコレクション)というメモリ管理を自動化する機能を採用していることが多く、メモリ管理をあまり意識せずともシステム開発を行なえます。
しかし、C言語にはそのような機能がないため、手動でメモリを管理しなければなりません。その結果、コードの安全性に不安がある、バッファオーバーランが起きやすいという問題がありました。
その点、Rustでは所有権という、変数に格納されたデータへ読み書きを行なう権限を用いて自動での管理が可能です。コンパイル時にBorrow Checkerというシステムによって所有権が適切かをチェックされ、所有権を持たない変数はデータの場合はコンパイルエラーとなります。
これにより、メモリの解放漏れなどのエラーを回避できるため、C言語やC++より安全性に優れているといえるでしょう。
マルチスレッド処理が可能
Rustでは、同時にプログラムを複数処理するマルチスレッド方式を採用しています。これにより、タスクを完了させるまでの時間を短縮することが可能です。
複数のスレッドが並行して実行される場合、スレッド同士が同時に同じデータにアクセスすることにより、デッドロックなどのエラーが生じやすくなります。
それに対し、Rustはスレッドセーフなデータ構造であることから、並行処理の際に生じる競合状態を避けられるため、マルチスレッドの開発を容易にしています。
高級言語のなかでもトップクラスの処理・実行速度
Rustは、Javaはもちろん、C言語やC++などの代表的な高級言語と比較しても、劣らない処理・実行速度を持ちます。
システムを作成するうえで、処理速度の速さは重要なポイントです。高いパフォーマンスが求められるアプリケーション開発においても、注目度が高いといえるでしょう。
Rustでできること
Rustで実現できることについて解説します。
バックエンドの開発
Rustでは、Webアプリケーションのバックエンド開発が可能です。実際に、Dropbox社が提供するストレージアプリでは、データウェアハウスのバックエンドの再構築にRustを採用しています。
RustでWebアプリケーションを開発する際に利用されるフレームワークとしては、「Actix Web」や「Rocket」などが有名です。
先述したとおり、C言語にも劣らない処理・実行速度を持つため、アクセスが集まりやすいシステム開発に適しているといえます。
フロントエンドの開発
Rustは、WebAssembly(ウェブアッセンブリ)というバイナリフォーマットの開発言語としても多く採用されており、JavaScriptと合わせてフロントエンド開発を行なえます。ウェブアッセンブリとは、Webブラウザ上で実行可能なバイナリフォーマットです。
Rustからウェブアッセンブリを生成し、それをJavaScriptで実行することで、高いパフォーマンスを持つWebアプリケーションを実現することができます。
このことから、Rustはフロントエンドの開発においてもおすすめの言語といえます。
機械学習
Rustは、もともと処理速度を高めるために作られた言語であることから、膨大な計算を必要とする機械学習にも適しています。
ただし、Pythonなどに比べるとまだフレームワークなどが十分発展していない点には、注意が必要でしょう。
OS開発
Rustは処理速度が速く、並行処理も可能なため、OSの開発にも適しています。これは、OS開発においても安全性やパフォーマンスへの配慮が求められるからです。
なお、LinuxカーネルやAndroid OSの開発言語に、Rustが採用されることが明らかになっています。
Rustの将来性
Rustは大手企業が開発に採用している言語であり、将来性は明るいでしょう。
すべてのモノや人がITによって接続され、パフォーマンスの高さや処理の高速化が求められる時代において、高級言語かつ処理速度が速いRustは、期待値の高い言語といえます。
また、Rustは定期的にアップデートされ、今後も新機能が続々と増える見込みです。これにより導入する企業もさらに増えると予想できることから、Rustの将来性はますます高まると考えられます。
Rustの学習方法
Rustを習得するための学習方法について解説します。
公式ドキュメント
Rustは公式ドキュメントが充実しており、初心者から上級者まで幅広く学習が可能です。公式ドキュメントでは、Rustの基本的な文法やライブラリの使い方などが詳しく解説されています。英語が標準ですが、日本語版も存在するため、英語が苦手な方でも学べるでしょう。
実際にコードを動かす場合は「Playground」というオンラインの開発環境を利用がおすすめです。Playgroundでは、ブラウザ上でRustプログラムを書いたり、実行したりできます。
Microsoftの公式チュートリアル
Microsoftが提供しているRustのチュートリアルも、Rust学習に適するサイトです。このチュートリアルには、ToDoリストをRustで作れるようになるまでの演習などが含まれます。その他、環境構築方法やデバッグ方法など、具体的な手順も解説されています。
知識チェックでは選択問題が出されるなど、単元ごとに理解しながら学習を進めることが可能です。実際にコードを書く演習問題も用意されているので、確実に実力が付くのも魅力的なポイントといえるでしょう。
とほほのRust入門
JavaやPHP、C言語など、あらゆるプログラミング言語を学べる「とほほシリーズ」のRust版もおすすめです。
シンプルな内容で、基本文法を一通り学べるため、初心者には非常に参考になるでしょう。ただし、演習問題などはないので、自分で開発環境を用意して実際にコーディングすることも必要です。
Rust by Example 日本語版
Rust by Exampleは、プログラムのサンプル集となり、Rustのコードを見ながら理解を深めていきたい方におすすめです。
特に、他のプログラミング言語を実際に使ったことがある方に適しているため、初学者よりも経験者のほうが活用しやすいでしょう。
まとめ:
Rustは、高速な処理速度かつメモリの安全性が高く、並列処理が可能なプログラミング言語として注目を集めています。WebアプリケーションやOS開発など、さまざまな分野での利用が期待されており、フロントエンドの開発にも利用されることが増えています。
初心者から上級者まで幅広く学習できる公式ドキュメントやチュートリアル、Webページなど、学習リソースも豊富に用意されています。
Rustの需要はますます高まっているため、エンジニアにとって今後学んでおきたい言語の一つといえるでしょう。