更新日:
IT業界のエンジニアには、技術者としてのスキルアップはもちろん、プロジェクトマネージャーやCTOへのキャリアチェンジなど、多様なキャリアパスが存在します。これらの選択肢を自分の関心や能力に合わせて選ぶことが重要です。一方で、キャリアパスが多いがゆえにわかりづらいという課題もあります。
本記事では、エンジニアのキャリアパスに関する考え方を紹介します。キャリアパスを考えるべき理由やポイント、代表的なキャリアパス事例をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
エンジニアがキャリアパスを考えるべき理由
エンジニアとしてキャリアアップや転職をする際、自身のキャリアパスを考えることは欠かせません。ITエンジニアの業界が企業の商流や職種によって細分化されており、それぞれで求められるスキルセットが異なっています。つまり、自分が理想とする働き方や担当したい業務に適合するキャリアを選択するためには、未来を見据えた計画が必要不可欠なのです。
キャリアパスを考える具体的なメリットとして、将来の自己像と現在のスキル、経験を比較することで、目標達成のための課題を明確にできることが挙げられます。これにより、必要な経験やスキルがわかり、日々の業務でもスキルアップへとつなげることが可能です。
また、転職先を選定する際にも、より適切な企業を見極めることができ、入社後のミスマッチを避けられるでしょう。自分らしい働き方や生涯の収入アップに向けた計画的な行動を実現できます。
エンジニアとしてのキャリアパスを考えることは、自身の望むキャリアを実現するための重要なステップといえるでしょう。
エンジニアのキャリアパス傾向とトレンド
現在のエンジニアは以前と比べて、多様なキャリアパスを描ける傾向があります。ここでは、その背景にある、IT業界の変化やトレンドを確認していきましょう。
IT業界のトレンド
IT業界では、技術の進化とともに求められるスキルやニーズが大きく変化しています。これまではシステム開発や運用・保守が中心でしたが、経済産業省の「IT人材育成の状況等について」によれば、2020年以降は従来の需要は減少することが予想されています。
一方でAIやビッグデータ、クラウド、IoTなどの分野では今後も需要が増加し、2020年代後半には市場の過半数を占めるとの見方が一般的です。特にAIの普及は従来の仕事を大きく変えていく可能性があるため、今後も業界のトレンドは注意深く見ていく必要があります。
ITサービス市場の構造変化
参照元:経済産業省「IT人材育成の状況等について」
キャリアの多様化
現在では、技術の進化や多様なWebサービスの台頭により、エンジニアのキャリアパスは大きく多様化しています。かつてエンジニアのキャリアパスは、開発職から始まり、経験を積んで上流工程を担当するのが一般的でした。
具体的にはスペシャリストとして特定の技術分野に深く専念する道や、ゼネラリストとして幅広い技術を習得し柔軟に対応する道、そしてマネジメントへの道が広がっています。さらに、組織での勤務かフリーランスとしての働き方を選べるようにもなりました。
転職も一般的になったため、エンジニア一人ひとりが自分に合ったキャリアを築ける時代になったといえます。
エンジニアのキャリアパスで最初に考えるべきこと
エンジニアのキャリアパスには考えるべきいくつかの選択肢があります。どれを選ぶかによって、自身が進むべき道が大きく変わってくるため、できるだけ早い段階で方向性を見極めていきましょう。
方向性:スペシャリストかゼネラリストか
エンジニアとしてのキャリアパスを考える際に、まず重要なのはスペシャリストになるかゼネラリストになるかを決めることです。
スペシャリストは、特定の技術や分野に深く精通し、その専門知識で市場価値を高めることができます。例えばRubyなどの特定の開発言語において高度な知識を身につけたり、金融業界など特定の業界に特化したりすることになります。スペシャリストが1人いるだけで、その分野に関する複雑な問題にも対処できるようになるため、重宝される存在になるでしょう。
一方、ゼネラリストは複数の分野にわたる知識を持ち、広い視野でプロジェクトの進行やチームのマネジメントをする能力が求められます。マネジメントを兼ね備えたプレイングマネージャーや、さまざまなスキルを組み合わせるフルスタックエンジニアがゼネラリストに当たります。
自分のキャリアにおいて何を重視するかによって、スペシャリストかゼネラリストかの選択が必要です。それぞれの道には異なる挑戦がありますが、自分自身の興味、強み、キャリアに対する目標を踏まえて、最適な道を選択しましょう。
専門領域:開発領域かインフラ領域か
エンジニアのキャリアパスを考える際、専門領域を開発にするか、インフラにするかを選ぶことも大きな分岐点です。
開発エンジニアは、システムの設計から開発、テストに至るまでを担当し、幅広い知識と経験が求められる役割です。ものづくりやプロジェクト進行が得意な人に適しています。一方、インフラエンジニアは、サーバーやデータベース、ネットワークの構築や運用を担当する役割です。専門知識を持つ必要があるため、1つのことを深めたい人に向いています。
働き方:会社員かフリーランスか
エンジニアとしての働き方には、大きく分けて正社員や派遣社員、契約社員などの会社員とフリーランスの2つの選択肢があります。
会社員は大規模プロジェクトへの参加や多様な業務に携われる機会があり、給与の安定性も保証されます。しかし、人間関係や職場環境によるストレスや、自身の希望とは異なる仕事を受け入れなければならないこともあります。一方、フリーランスは仕事内容や働く時間を自分で選べる自由があり、理想のライフスタイルを追求できますが、収入の不安定さや営業や経理などをすべて自分で対応しなければなりません。
どちらを選択するかは、個々の性格やリスクへの耐性、キャリアに対する価値観によって異なるため、自分に合った働き方を見極めることが重要です。
エンジニアの職種別キャリアパス
エンジニアは、職種によってキャリアパスが細かく分かれています。ここでは、システムエンジニア、インフラエンジニア、上流工程担当のエンジニアの3つの場合の具体的なキャリアパスを紹介します。
システムエンジニアのキャリアパス
システムエンジニアは、社内外の業務プロセスを効率化するシステムの設計・開発、運用保守に従事する役割です。銀行システムや会計ソフトウェアの構築など、企業の業務遂行に不可欠なシステム開発を担います。システムエンジニアには、開発技術を深め特定分野のスペシャリストを目指す道、または幅広い知識と経験を活かし、ゼネラリストとしてキャリアを築く道があります。
スペシャリストの場合は、技術の専門性を高めることで、インフラ、データベース管理、特定のプログラミング言語など、特化した分野に関する専門家としての役割が求められるでしょう。一方、ゼネラリストは開発経験を基に、PM(プロジェクトマネージャー)や開発ディレクター、ITコンサルタント、セキュリティエンジニアなど、多岐にわたる役割への展開が可能です。
自身の興味や能力、市場の需要に応じて、専門性を深めるか経験を広げるかを選択できるため、システムエンジニアのキャリアパスは多様に考えられます。
インフラエンジニアの場合
インフラエンジニアがキャリアパスを構築する際には、サーバーや、ネットワーク、データベースなど、特定の専門分野や先進技術が必要不可欠です。サーバーエンジニアがクラウドサービスやサーバーレスアーキテクチャーに関する深い知識を持つことや、ネットワークエンジニアが最新の5G技術やIoT環境の構築に精通していること、データベースエンジニアがビッグデータの処理や分析技術を熟知していることが、それぞれのキャリアアップに直結します。
これらの技術分野における専門知識は、業界の需要が高く、その価値はますます高まっています。インフラエンジニアがこれらの技術を習得し、組み合わせることによって、自身の市場価値を大幅に高めることが可能です。
キャリアアップを目指すインフラエンジニアにとって、継続的な学習と自己成長は欠かせません。最新の技術トレンドを追い続け、新しい知識やスキルを積極的に取り入れることで、より高いポジションや別の専門分野への移行など、多様なキャリアの可能性への扉を開くことができるでしょう。
上流工程担当のエンジニア(ITコンサルタント、PM)の場合
エンジニアのキャリアパスを考える際、上流工程に特化する選択肢もあります。上流工程とは、システム開発の初期段階で行われる要件定義や基本設計、詳細設計を指し、プロジェクトの方向性を決定づける重要な役割を担います。広い知識と深い理解が求められるため、その工程に特化した専門性を高めることが必要です。
上流工程に強みを持つ代表的な職種は、ITコンサルタントやPMです。ITコンサルタントは、企業の経営課題をITの観点から解決する提案を行う役割で、多様な業界の知識を活かし、幅広いクライアントへのコンサルティングを通じて自身の市場価値を高めます。もうひとつのPMは、プロジェクト全体のマネジメントを行い成功に導く責任を持ちます。
これらのキャリアパスは、単に技術的なスキルだけではなく、プロジェクトを成功に導くための戦略的な思考やビジネススキルも要求されるため、専門性と同時に広い視野を持つことが重要です。エンジニアがこれらの職種に進むには、継続的な学習と経験の積み重ねが不可欠であり、専門性を深めつつも、異なる業界や技術領域に対する理解を深めることが成功のカギとなります。
エンジニアのキャリアパスを決める際のポイント
キャリアの方向性を決めていく上では、いくつか押さえるべきポイントがあります。将来目指しているエンジニア像を効率良く実現していけるよう、キャリアパスを考えていく際のポイントを解説します。
キャリアのゴールを明確にする
エンジニアとしてのキャリアパスを考える際には、自分が将来どのような役割を担いたいのかを明確にするのがポイントです。
エンジニアの世界は幅広い知識やスキルが求められるため、1つに絞る必要は必ずしもありません。しかし、明確な目標があることで、学ぶべきことや取り組むべき方向性がはっきりし、無駄なく成長できる可能性が高まります。
最初から明確な方向性を決定する必要はありませんが、自身の適性や興味、目指すキャリアについてじっくり考え、十分な情報収集を行うことが大切です。この過程で、自分自身の強みや関心のある分野を深く理解し、将来的にどのようなエンジニアになりたいのかのビジョンを描くとよいでしょう。
自分の経験やスキルに方向性を持つ
エンジニアのキャリアを構築する際の重要なポイントは、エンジニアが具体的なゴールを決めたら、ゴールに向けて必要な経験やスキルを身につけることです。エンジニアの専門領域は広く、多様なスキルと知識が求められますが、具体的なキャリアの目標を持つことで、必要な学習や取り組むべき方向がはっきりします。これにより、効率的にスキルアップし、目標達成へと近づくことが可能になります。特定のリーダーポジションや最先端の技術領域など、人気が高く競争が激しい役割に挑む場合、簡単にチャンスが得られるとは限りません。そのため、早い段階から準備を始め、関心を持って取り組むことが成功のカギとなります。
具体的な準備として、関連する資格を取得したり、みずからプロジェクトを立ち上げて実際に開発に取り組んだりするなど、独学でのスキルアップが効果的です。このような自主的な取り組みは、意欲をアピールする絶好の機会となるでしょう。
最新の技術や業界のトレンドを理解する
エンジニアとしてキャリアを築く上で、最新の技術や業界のトレンドに常にアンテナを張ることが重要です。技術の発展は速いため、現在持っている知識や技術があっという間に時代遅れになる可能性があります。このような環境下では、定めたキャリア目標や計画も、新しい情報に基づいて柔軟に見直さなければなりません。
このような変化に迅速に対応するためには、日頃から業界の最新情報にふれ、学習を続ける姿勢が不可欠です。また、キャリアパスの変更に柔軟に対応できるような準備も重要になります。この点で、フリーランスとしてのキャリアを選択することは、自分自身のキャリアを自己管理し、技術の進化や業界の変化に迅速に適応できる有効な方法といえます。
フリーランスとして働くメリットのひとつは、自分自身でキャリアをコントロールしやすいことです。特に、技術や業界が急激に変化する現在のような環境では、フリーランスとしての働き方を早期に検討することが、長期的なキャリア戦略の一環として効果的です。みずからのスキルとキャリアを自分で管理し、時代の流れに柔軟に適応していきましょう。
自分が理想とするエンジニアとしてのキャリアパスを考えよう
エンジニアの働き方の多様化が進んでいく現代において、自分が理想とするエンジニアがキャリアパスを考えていくことは必要不可欠です。キャリアパスを考える上では、考えるべき方向性がいくつかありますが、働き方の選択も必要です。
フリーランスとして働くことには、やりがいや自身の裁量の大きさといった魅力があります。また時代の変化に対応しやすいという利点もあるため、一度フリーランスとして働くことを検討してみてはいかがでしょうか。
「PE-BANK」は、フリーランスをサポートするエージェントとして、本来の仕事に注力できるよう、案件の提案から事務作業まで一括して請け負います。フリーランスエンジニアという働き方に興味がある方は、PE-BANKにご相談ください。