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「#ファッション業界の未来とIT」イベント開催レポート

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2017年12月7日、ハイファッションブランドが立ち並ぶ東京、銀座の「CHANE CLAIRE パノラマラウンジ」にて、イベント「#ファッション業界の未来とIT」が開催されました。

近年、ファッション業界では企画・製造・流通・販売などあらゆる工程で、ITソリューションが必要とされています。それはECだけではなく、スマートオーダーシステムやオンラインスタイリング、ライフスタイルの提案など、幅広い分野で導入が進み、消費者とファッションの関わり方、そして購入までのプロセスにも大きな変化があらわれています。

そこで、今回はファッション業界の最先端で活躍する3氏を招き、「#ファッション業界の未来とIT」をテーマに、ファッションの世界でITがどのように活用されているのか、具体的な事例や様々なエピソードを中心に語っていただきました。講師は、株式会社ライフスタイルデザインCTOの中筋氏、株式会社エアークローゼットCTO辻氏、株式会社コードミーCTO寺川氏の3名。それぞれの立場からみた、興味深いお話はここでしか聞けないものばかり。熱心に聞き入る来場者で会場は満席です。

第1部 IT技術で変革するオーダースーツ

前職が陸上自衛隊重迫撃砲副砲手だったという異色の経歴を持つ、株式会社ライフスタイルデザインCTO中筋氏。今、同氏が手がけているのが「LaFabric」というスマートオーダースーツとオーダーシャツのビジネスです。お話は従来のオーダースーツの問題点について、その実際の経験談からはじまりました。

中筋氏は、この分野に足を踏み入れた際に驚いたことがあったそうです。それは、いまだに多くが書類と手書きというアナログなプロセスで成り立っていたということ。人の手で採寸をし、ディテールのこだわりや好みを聞き取ってそれを発注書に手書きする。

そしてその書類は昔ながらのFAXや電話でやりとりされる。情報の属人性が非常に高く、データが効果的に共有されない。オペレーションも煩雑でコスト効率も悪かった。そんなレガシーな仕組みが多く残るオーダースーツ業界を、いかにIT技術を活用して効率化していくか、それが大きな課題だったそうです。

アナログからの脱却、スマートなオーダー体験の提案

後半は、「LaFabric」で実際に行われている具体的な取り組みを紹介です。まず、一着のスーツには基本的な寸法のほか、体系のクセを補正するために約350ものデータが必要なのだそうです。それらが人の手と紙の書類で処理されているといいます。その書類を見せていただきましたが、項目の多さと細かさに、会場の多くの方が驚いていました。オーダースーツ業界が閉鎖的でかつシステム化の必要性を感じさせるエピソードです。

このように従来の仕組みではオーダーのたびにオペレーションの無駄があった。そこで「LaFabric」では各寸法や補正データ、トレンドなどと、1000を超えるパターンを効率的にマッチングさせる仕組みを開発。さらに独自の生産管理システムで全てのデータをクラウド上で管理。ECサイトから、メーカー、ロジスティックまで連携することで無駄をなくし、利用者のUXを上げることに繋げているといいます。

また、従来のECに加え、リアル店舗の出店もすすめているそう。ECと実店舗のハイブリッド化で、場所やチャンネルの制約のない高品質で低価格な満足度の高いスマートな購買体験を目指すといいます。従来のオーダースーツは、敷居が高いものというイメージがありました。しかし、IT技術がオーダースーツをもっと身近なものに変えてくれる。誰もが最高の品質のスーツを、最適な価格で手に入れることが出来る。そんな理想的なオーダースーツの未来を期待させる素晴らしい講演でした。

第2部 IT×パーソナルスタイリングによる新しいライフスタイルの創造

第2部は国内最大級のファッションレンタルサービス「エアークローゼット」のCTOを勤める辻氏の講演です。まず創業当事から同氏が手がけているパーソナルスタイリングによる、新しいライフスタイルを提案するエアークローゼットのサービスについての紹介からはじまりました。

エアークローゼットはファッションレンタルとパーソナルスタイリングが利用できる、新感覚のサービスとして、今ファッション業界で大きな話題を呼んでいます。IT技術を使って、利用者一人ひとりにマッチしたスタイリングを、プロのスタイリストが提案、もちろん購入もできる。そんなエアークローゼットはどんな発想で生まれたのでしょうか?

辻氏はこう語ります。「個人でセレクトできるスタイリングにはどうしても限界がある、しかしそこにプロのスタイリストの視点を入れ、情報をシェアリングすることでこれまでにないファッションの楽しみ方や、新たな世界が広がるはず」と。

ITによる効率化だけでなく、洋服との出会いを演出

エアークローゼットはサービスの全てがオンライン上で管理されています。利用者がサイズや好みを入力するとそれを元にスタイリストが洋服をセレクト。その情報は倉庫のAPIと連携し、2~3日後に洋服がピッキングされ利用者の手元へ発送。そんなICTを活用した効率的なサイクルの詳細も講演では解説していただきました。

また、ユニークなのは商品が到着するまでスタイリングオンラインの画面でも見せないということ。洋服との出会いを楽しむ演出として、このようなことを行っているのだとか。こういったエピソードにも会場の方は興味津々です。

スタイリングのフィードバックとその情報の抽象化。そして利用者とスタイリストのマッチングや、スタイリングの解説など、サービスの性格上人の手に頼っている部分も多いというエアークローゼット。今後はスタイリストがユーザーとコミュニケーションやサービスの本質の部分に集中することができるよう、ディープラーニングやAIの技術を積極的に導入し、よりサービスの品質を高めていきたい、というのが辻氏の考えです。「AIは人に取って代わるものではなく、人を手助けするアシスタントして活用していくのが現実的」と語ります。その言葉に、会場の多くの方が共感を覚えていました。

第3部 香りとテクノロジー

第3部の講師はCODE MeeeのCTOを勤めながら、プライベートではエンジニアのためのポッドキャスト「soussune」を主催しているという寺川氏。同氏が今手がけているのはパーソナライズアロマの定期購買型ECサービス「CODE Meee」です。講演は「会場の皆さんは、香りのある商品ってどんなものを使っていますか?」寺川氏のそんな質問からはじまりました。

香りの商品は想像以上に様々なシーンで使われている、と寺川氏は語ります。例えばフレグランスにコスメ、さらに洗剤や柔軟剤、消臭スプレーなど。そんな香りの商品は、多くの場合香りの開発経験豊富な限られた専門家が調香しているのだそうです。

つまり一部のプロが万人に好まれる香りを作り提供しているという構造なのだとか。でも、そうではなく、もっとパーソナライズされた香りを商品にできないか、そこからスタートしたのが「CODE Meee」なのだそうです。そんな香りをパーソナライズしていくというECサイトのフローについて説明をしていただきました。

香りのフォーミュラーをベースにカスタマイズしてゆく

「CODE Meee」が目指しているのは新しい香りの社会。日々のストレスを香りで解消できたら、という想いがそこにこめられています。香りのカスタマイズには、プロの感性に頼らない新たな仕組みがとられています。実際に利用者が購入する場合どうするのでしょう。寺川氏によると、まずWeb上で利用者はプロフィールを入力します。どんな香りが好きか、求める香りのイメージは、香りでどんな気持ちになりたいかなど。その診断データをもとに豊富に用意されたパターンの中からまずはそれにマッチした香りが送られます。利用者はその商品を使い感想をフィードバック。そしてその情報をさらに分析、リサーチを重ね、その人のために香りをカスタマイズするのです。ベースとなる香りのリコメンドパターンは3,000種類以上からスタート!さらに個々のカスタマイズデータは利用者が増えるたびに拡大していくという仕組みです。

実際にどのような形で香り商品が届けられるのか会場ではそのサンプルも見せていただきました。シンプルでスタイリッシュなパッケージには朝・昼・夜のそれぞれの時間に楽しめる3つ商品のほかに、香りのディスクリプションカード(香りの説明書)が添付。自分だけのアロマというものがどういうものなのか大変興味深いですね。最後に実際に使用されているアーキテクチャーなどを紹介いただきました。

セミナー終了後、講師の3氏を交えパネルディスカッションが行われました。先日発表されたZOZOスーツの話題から、それぞれのサービスにおけるスマートスピーカーの活用の可能性など話題は付きません。

今回は、ファッション業界の未来とITというテーマと、銀座という場所柄かエンジニアの方だけでなく、マーケターほか様々な立場の方が参加されていました。講師のお3氏のお話はどれも興味深く、またユーモアも交えながら現在のビジネスのエピソード、具体的なシステムの話、さらに新たな技術に対する意見や感想なども聞くことができ、会場はおおいに盛り上がりました。

「ANKET」では、今後もITエンジニアの皆様に様々な情報を提供すべく、様々なイベントを企画してまいります。皆様のご活用、ご参加をお待ちしております。

登壇者紹介

株式会社ライフスタイルデザイン
執行役員CTO
中筋 丈人(ナカスジ タケト)氏


2015年アマゾンジャパン(㈱)入社 ディストリビューションセンターのシステム構築、運用業務に従事。
2016年4月にリードエンジニアとしてライフスタイルデザインに参画。同年11月に執行役員CTOに就任。

株式会社エアークローゼット
CTO
辻 亮佑(ツジ リョウスケ)氏


2012年から楽天株式会社にて、フロントエンドに特化して新規立ち上げビジネスの設計、開発、チームマネジメントを担当。
2015年より株式会社エアークローゼット(airCloset)CTOに就任。

株式会社コードミー
CTO
寺川 直宏(テラカワ ナオヒロ)氏


2017年、CODE MeeeにCTOとして参画。
プライベートでは、soussuneというエンジニア向けのポッドキャストを運営している。