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データアナリストは、企業が持つデータを分析して、課題解決や効率化、付加価値創造につながる提案を行う専門家です。特定の資格は必要ありませんが、データアナリストとしての能力やスキルを証明し、キャリアの可能性を広げたいなら、資格の取得がカギとなります。
本記事では、データアナリストがぜひ取得しておきたい資格について解説します。加えて、取得するメリットや将来性についても説明しますので、キャリアアップを目指している方は参考にしてください。
データアナリストとは
データアナリストとは、企業や組織が保有する大量のデータを解析し、有用な情報を抽出し活用する専門家です。具体的には、分析ツールを用いてデータの収集、整理、分析、解釈を行い、ビジネスに役立つアイディアや課題解決策を提案します。
データアナリストには、コンサル型とエンジニア型の2つのタイプが存在します。コンサル型のデータアナリストは、クライアント企業の課題解決のためにデータ分析を行う仕事をし、コンサルティング会社に勤務するのが一般的です。一方、エンジニア型のデータアナリストは、ITエンジニアに近い立ち位置で、Webメディア運営会社での効果測定やアクセス解析などを行います。
データアナリストと近しい職種にデータサイエンティストがありますが、一般的にはデータサイエンティストのほうが担当領域は広く、コンサル型とエンジニア型の両方の職域をカバーしていることが多いようです。また多くの場合、データアナリストの上位職としてデータサイエンティストが位置づけられています。ただし、両者の線引きは曖昧で明確にはなっていません。
データアナリストの将来性
データアナリストは近年、技術の進歩と市場ニーズの拡大に伴い、需要が高まっており、将来性があるといえます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「IT人材白書2020」では、企業が今後よりいっそう必要とするIT業務に「データ分析などの高度化による情報活用」が挙げられており、データ分析ができるデータアナリストへの需要はIT部門に限らず、ビジネス部門でも拡大しています。
この需要の高まりの背景は、テクノロジーの進展です。IoTを活用したリアルなデータの収集や、ネット上でのデータ収集の増加により、ビジネス上の競争優位性を高めるためのデータ活用の重要性が増しています。それに伴って、IT系人材に対する需要が強くなっており、特にAIやデータサイエンスなどの分野で高いスキルを持つデジタル人材において顕著です。
さらに、今後はビッグデータとAIの発展により、データ関連の仕事は増加していくことが予想されます。これらの技術と密接に関連しているデータアナリストの仕事は、未来に向けてさらなる将来性とニーズの高まりが期待できるでしょう。
データアナリストに必要な知識とスキル
データアナリストはニーズが高い一方で、高度なスキルや幅広い知識が求められます。ここでは、データアナリストに求められる知識やスキルについて解説します。
統計学の知識
データアナリストには、統計学の知識が必須です。分析手法としてクラスター分析やアソシエーション分析などがあり、これらを扱うためには統計学が必要となります。
また、統計学だけではなく、確率、統計、微分・積分、線形代数などの知識も求められます。データアナリストにとって、これらの数学的知識は基礎能力として不可欠であるといえるでしょう。
プログラミングスキル
データアナリストは、プログラマーと異なり、日常的にプログラミングを行うわけではありませんが、機械学習やディープラーニングなどの分野で作業する際も、プログラミングの知識が必要になることがあります。
データアナリストに重宝されるプログラミング言語として、R言語やPythonがあります。これらの言語には、データ分析に便利なライブラリがそろっており、マスターすることでデータの処理や分析作業をより効率的に行うことが可能です。データアナリストとしてのキャリアを築くためには、基本的なプログラミングスキルを身につけておくことが推奨されます。
ソフトウェアの知識
データアナリストとして成功するためには、データ分析ソフトウェアの知識や技術を習得することが不可欠です。これにより、情報処理が迅速化し、プログラミングコードを打つ手間を省きながらデータの計算や統計学的解析を行うことが可能になります。
また、データ分析だけでなく、データの可視化においてツールの活用は重要です。例えば企業が持つさまざまなデータを分析し、可視化するソフトウェアであるBIツールを活用すれば、データアナリスト以外のメンバーでもデータをより有効に可視化できるようになるでしょう。
マーケティングの知識
データアナリストの職務として、データを分析するだけではなく、その分析結果をビジネスの課題解決に活かすため、マーケティングの知識やビジネスへの理解が求められます。
ビジネスの現場では、市場調査の手法やマーケティング戦略などの知識が必須で、データの背後にあるビジネス上の意味を理解し、それをもとに戦略的な意思決定をサポートする必要があります。そのためデータアナリストは、マーケティング知識を身につけることで、データ分析の結果をビジネスの利益に結びつけることが可能になるのです。
論理的思考力
データアナリストには、論理的思考力も求められます。膨大なデータから正確な結論を導き出すため、データのパターンを特定したり、分析結果を適切に解釈したりする能力が必要です。
また、分析結果を他者に理解してもらうためには、資料作成やコミュニケーションにおいても論理的に物事を説明する力が重要です。さらに課題解決に際しては、現状分析や提案の根拠を多角的な視点からロジカルに展開する能力が必要とされ、これがデータアナリストの価値を高める要素となります。
データアナリストの資格を取得するメリット
データアナリストとして活躍する上で必要なのは、高いスキルや経験だけではありません。データアナリストにとって、資格を取得するメリットを解説します。
客観的スキルの証明になる
データアナリストに必要なITや統計学の分野に関する専門的な資格を取得することで、客観的なスキル証明になり、キャリアアップに役立つというメリットがあります。データアナリストになるためには特定の資格は必要とされるわけではないものの、データアナリストのスキルを証明することが難しいという一面があるため、客観的にスキルを示す手段として資格が大きな役割を果たします。
資格を取得することによって、データアナリストとしての専門知識や技能を有していることを証明でき、仕事を求める際やキャリアを築く上での信頼性を高めることが可能です。
給与アップにつながる
データアナリストの資格取得は、社内での給与アップにつながる可能性があることもメリットです。
経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」では、ITスキルを判断する際に「保有資格」を非常に重視する、またはある程度重視する企業が全体の約70%を占めていました。これは、資格取得が社内での評価向上や給与アップに直接的につながることを示唆しています。
IT人材のスキルレベルを判断する際の保有資格の重要度
※参考元:経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」
また、多くの企業では、資格取得者に対して資格手当を支給しています。この手当は、試験合格時に一時金として支給されることもあれば、毎月の給与にインセンティブとして加算される形で支給されることもあり、企業によって異なります。
このことから、有力な資格を保有することは、データアナリストとしてのキャリアアップに役立つだけでなく、年収の向上に関係するといえるでしょう。
転職や独立に有利になる
データアナリスト関連の資格を持っていることで、基礎的なスキルがあることの証明となり、転職活動を有利に進める手助けになるというメリットも考えられます。特に経験が浅いデータアナリストや未経験者が転職する場合、経験をアピールできません。その場合でも、資格がその人の基本的な能力と理解を裏付けるため、転職活動において強力なサポートとなり得ます。
また、フリーランスとして独立する際も、資格は大きなメリットとなります。資格は仕事を依頼するクライアントに対して自身のスキルと知識を証明することになり、クライアントへの安心感につながるでしょう。
データアナリストにおすすめの資格
データアナリストは、具体的にどのような資格を取るべきなのでしょうか。ここでは、特におすすめの関連資格を6つ紹介します。
統計検定
統計検定は、一般社団法人日本統計学会が認定する、データアナリストとしての基本的な統計知識とスキルを証明する資格です。
試験には、4級から1級までのレベルがあり、データにもとづく客観的な判断や科学的問題解決能力を評価します。また、データサイエンス部門の試験区分も存在し、AIやデジタル社会における共通スキルを認定します。
統計検定では、膨大なデータから客観的傾向を見極め、問題を解決する能力があることを認定します。
データベーススペシャリスト
データベーススペシャリストは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する、データベースに関する専門知識を試される資格です。
試験では、データベースに関する企画や要件定義、開発、運用、保守を主導的に担当できる能力を問う高度な設問が出題されます。認定されると、大規模なデータベースの設計や管理において、企業経営への活用能力があることを証明できます。
データアナリストにとっても、データベースは欠かせない知識領域です。データアナリストがデータベーススペシャリストの資格を取得することで、データの構造を最適化し、効率的なデータベースシステムを設計・運用する能力があることをアピールできます。
ORACLE MASTER(オラクルマスター)
オラクルマスターは、世界的にも知名度の高いデータベース製品「Oracle」に関する専門的な知識を試される資格です。オラクルマスターはデータベース管理者(DBA)の資格と、データベースを扱う言語であるSQLに関する資格に分かれています。さらにDBAは難易度によってBronz・Silver・Goldなどのレベルに分かれています。
オラクルマスターを取得することで、日本国内でトップシェアを占めるOracleデータベースを扱えるようになり、データアナリストとしての実践的なスキルと知識を証明可能です。またIT関連の試験の中でも知名度の高い資格のひとつであるため、IT人材としての基礎能力の高さを証明できるでしょう。
Python3エンジニア認定データ分析試験
Python3エンジニア認定データ分析試験は、Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法の専門知識を認定する資格です。Pythonはデータサイエンスに特化したプログラミング言語で、データ収集作業に必要なパッケージも提供されているため、データアナリストにとって必要な言語といえます。
試験には、初心者向けの「Python3エンジニア認定基礎試験」と中上級者向けの「Python3エンジニア認定データ分析試験」があります。基礎試験ではPythonの基本知識や文法が中心に出題され、データ分析試験ではデータアナリストの実務に関連するデータ分析の基礎や方法が問われます。
Python3エンジニア認定データ分析試験で認定を受けることは、データアナリストとしてのデータ分析作業を効率的に行うための実践的なスキルを持っていることを示す以外にも、今後のキャリアでデータサイエンスやAI関連の分野に進みたいと考えている場合にも、有効なステップとなるでしょう。
G検定・E資格
G検定とE資格は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が主催するディープラーニング(深層学習や機械学習)に関する知識を示す資格です。
G検定は、ディープラーニングを事業に活用するための人材を対象としています。試験ではデータ収集、加工、分析や統計検定3級程度の数理統計など、データアナリストの実務に直結する内容が出題されます。
E資格は、AI機械学習エンジニア向けの試験です。国内の民間AI関連資格の中でも特に高い難易度を誇ります。試験には、確率分布や特異値分析などの高度な数学知識が含まれています。E資格を受験するためには、協会の認定プログラムを受講する必要があるので、事前にご確認ください。
G検定とE資格は、データアナリストに関連があるディープラーニングやAI技術に関する専門知識を深めるために有効であり、IT業界でのキャリアアップやスキルアップを目指す人にとって重要な資格といえるでしょう。
アクチュアリー資格試験
アクチュアリー資格試験は、公益社団法人日本アクチュアリー会が認定する資格です。IT分野ではありませんが、データアナリストに必要な確率や統計などの専門知識を証明します。
主にコンサルティング会社や金融機関で数理業務を行う人向けですが、データアナリストにとってもデータ分析の基礎ともなる数学的スキルは重要なので、アクチュアリー資格試験の取得はデータアナリストにもおすすめです。
アクチュアリー資格を取得することで、確率論や統計学などの数学的手法を用いた将来の予測ができる専門家としての価値が高まります。
資格を取得して、データアナリストとしてのキャリアを充実させよう
データアナリストはニーズが高く今後の需要も見込まれる職種ですが、資格を取得することでさらにキャリアアップを目指せます。資格は客観的なスキルの証明が可能で、社内での評価だけでなく、転職や就職においても有利に働くでしょう。
さらに実績と組み合わせてアピールできれば、独立してフリーランスとして働ける可能性も大いにあります。フリーランスには、収入面だけでなく組織内の人間関係に悩まされることなく、自由に仕事ができるという大きな魅力もあります。データアナリストとしてのキャリアを考える上で、フリーランスとして働くこともご検討してみてはいかがでしょうか。
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